2022東京ヤクルトスワローズ髙津流 熱燕マネジメント

王者として迎える2022シーズン開幕!
日本一は目指すが、「連覇」は1ミリも考えていない

日本一は目指すけれど、「連覇」は1ミリも考えていない

――その一方では「もっと若手はアピールを」と苦言も呈していました。

髙津 当然、19歳、20歳の若い選手が一軍のピッチャーのボールを打ったり、一軍のバッターを抑えたりするのは簡単なことではないということは理解しています。でも、プロの世界は生き残りをかけた熾烈な競争の世界です。「自分は1年目だから、2年目だから」とのんびりと構えていられないのが現実です。やっぱり、まだ経験のないうちは山田、村上、ノリ(青木)の中に入ると、どうしても目立たなくなる。でも、そこは我慢が必要なんですよね。実際に戦力になるかどうかは別として、新しい人が出てくることでチームが元気になるのは間違いないですから。

――二軍監督時代には「育てるためなら負けてもいい」と発言していました。改めて、一軍監督となった今、この点についてはいかがですか?

髙津 うーん、良くも悪くも、未だに僕は「育成」という目を持ってしまっているのは確かですね。我慢して壮真を使う、我慢して長岡を使う。ひょっとしたら、「もっと他の選手を使ってよ」と思っている選手もいるでしょう。でも、何度も言わせてもらっていますけど、ヤクルトスワローズというのは今年だけじゃないので。来年も、10年後もヤクルトスワローズはある。今年勝つことが大前提ですけど、その先も見据えるのが監督業の一つだと僕は思っています。それに若い子が頑張っている姿を見るのは楽しいですよ。

――若手選手の奮闘ぶりは、見ていて楽しいですか?

髙津 楽しいですね。努力している姿。できなかったことができるようになる姿。逆になかなかうまくいかずにもがいている姿も楽しいですよ(笑)。「この世界はそんなに簡単なものじゃないんだよ」と気づいてくれるのが嬉しい。ケガをした選手がまたグラウンドに戻ってくる姿も嬉しいんです。

――さて、昨年の日本一を経て、今季は球団史上初の「連覇」という大命題を担った上でのペナントレースとなります。その点についての意気込みを教えてください

髙津 昨年は日本一になりましたけど、まだまだできないことはたくさんありました。僕は性格的に「全部を潰したい。90点ではダメで、100点を取りたい」というタイプなんです。去年できなかったことを確実にできるようにして、チームとしてもっと成績を上げていきたい。そんな思いが強いです。

――「連覇」に対するプレッシャーはいかがですか?

髙津 僕はあんまり「連覇」ということは意識していないんです。正直、1ミリも考えていない(笑)。もちろん、日本一になりたいですよ。「勝ちたい」という思いは強い。でも、そんなに簡単なものではないこともよくわかっているから、簡単に口には出せないんです。

――明治神宮で行われた必勝祈願の際には「みんな元気」と絵馬にしたためたのも、そんな思いからですか?

髙津 「連覇」とは簡単に口にはできないけど、勝つチャンス、連覇の確率を上げるには、みんなが元気でプレーすること。みんなが元気にグラウンドに立てることが最低の条件だと思っているので、「みんな元気」と書きました。小川は「日本一」と書いていましたけどね(笑)。

――では改めて、今日から始まるペナントレース、そして今回から始まるこの連載についての意気込み、ファンの方へのメッセージをお願いします。

髙津 昨年は日本一になって、ファンのみなさんに楽しさや感動をお届けできたのかなと思っています。もちろん、今年もそれを期待されていることと思います。今シーズンも「何が起きるんだろう?」という、野球の本当の面白さ、感動をお届けします。そして、この連載を通じて、僕の本音だったり、素直な感情だったりをお伝えします。今年も「応燕」をよろしくお願いします!

 

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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