健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

「悲惨すぎる孤独な老人」にならないためにすべき一つのこと

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本当に孤独はだめでしょうか

孤独が長生きや健康に悪いとしても、実際に独居で生きているお年寄りは少なくありません。私も外来でそうしたお年寄りをたくさん診ています。
超高齢化と医療技術の進化が相まって、家族に先に亡くなられたあとも一人で長く生きていくというケースが増えているように感じます。
誰もが一人で暮らさなければいけない状況に陥る可能性があり、他人事ではないのです。

しかし、私はそれを悪いことだと思っていません。「孤独な状態」と「孤独感」は別だと考えているのです。
人と接する時間が多くても孤独を感じている人もいますし、逆に独り暮らしで配偶者を失っても、孤独を感じないで生き生きとしている人もいます。
独居はいけない、一人住まいはさみしい、ということはないのです。孤独と感じる心の問題なのです。

とはいえ、どうやら日本人は孤独を感じやすい民族のようです。
というのも、日本人の8割は疎外感や不安を感じやすい遺伝子を持っていると言われています。
それは、アフリカから人類の祖先が長い旅をして日本にたどり着き、海を見たとき怖いから海のむこうには出ていかず、定住したのが日本人となったため、のようです。そのようにして、不安感を持ちやすい遺伝子を持ったのが日本人の祖先だとも言われています。

いま、日本の都会では他人とのつながりが稀薄になっていると言います。そこには、人と関わるのが苦手な日本人の特性が影響しているのかもしれません。
ただし、人との付き合いがうまくできないと、どうしても孤独に突き当たってしまいます。

孤独とどうつきあえばいいのでしょう

一人でいることが苦痛でもなんでもなく、楽しく過ごせるのであれば、孤独はむしろプラスに働きます。しかし、前述したように孤独を感じやすいのは日本人の特性ですから、それが健康や長生きに影響してきます。だからこそ、孤独というものとうまく付き合う方法を考える必要があります。

まず、自分の孤独感の原因を見つけてみてはどうでしょうか。孤独感を客観的に見るのです。その原因がわかれば解決策を見つけることができます。解決できるものだと認識できれば、ぐっと心は軽くなるはずです。

米シカゴ大学のルイス・ホークリー博士によれば、孤独は自然な感情であるから、受け入れ、自然に過ぎ去るものと考えることが大切だとしています。
具体的な行動として、人に会う、共感できる団体のボランティア活動、ガーデニング、ポジティブな日記を書くことなどを博士は勧めています。またSNSなどからは一時遠ざかるのもいいとしています。時にはもちろん心療内科などを受診することは大切でしょう。
友人、周囲の知り合いなどが助けてくれることもあります。他人からの支援を素直に受け入れることも重要でしょう。

これは私自身の経験から来る話ですが、医師も孤独なものです。
医師は患者さんといろいろ話をするので、孤独など感じる時間はないだろうと思うかもしれませんが、医師の友人たちを見ても、仕事ばかりやっていてオフのときは一人のことが多く、皆、孤独なのです。
それでも孤独をストレスに感じていなさそうな人が多いのは、医師という仕事にプレッシャーがあるため、孤独がある種の息抜きになっているのかもしれません。

いずれにしても、そうした孤独に慣れた身からアドバイスさせてもらうとすれば、孤独から脱出するには、何か自分から関わらないといけないことが多いように思えます。

しかし、それもなかなか難しいなら、いままでやっていなかったことをやってみてはどうでしょう。

・入ったことのないレストランへ行く
・読んだことのない作家の本を読む
・あまり交流のない友人にメールする

ほんの少し行動を変えることで、見えてくるものが違ってきます。そうすれば、孤独が消えるものだとわかってくるものです。
内側に向かう意識を外に向ける、それだけで違ってくるのです。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界で一番受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。推理作家協会会員。

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