健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

イライラで寿命が縮む? 医師が教えるストレスを抑える技術

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イライラの原因は何か

普段の生活でイライラしない人はいないでしょう。エレベーターがなかなか来ない、注文した料理と違うものが出てきた、思うように仕事が進まないなど、毎日私たちはイライラする感情と闘っているようなものです。
そうしたイライラへの対処法は、深呼吸をして気持ちを楽にする、たまにはおいしい物を食べるなどたくさんあります。しかし、そう簡単にできないのが現実です。
私たちはこうしたイライラをもたらすストレスを回避するのはなく、うまく付き合っていくしかないのでしょうか。

では、そもそもストレスとはなんでしょうか。
ストレスとは「外からの刺激」によってからだの中に生じる変化のことです。「外からの刺激」というのは、漠然とした不安からショックな出来事、お金・恋愛の問題に至るまで実に様々なものが刺激となり、ストレスを引き起こします。
場合によっては、自分がストレスと感じていないことが実はストレスの原因になっていたりします。つまり、ストレスがあるという自覚が持てない場合もあり、そこが難しいところです。

ただし、多くの人にとってストレスを引き起こしている主な原因はわかっています。
それは、仕事場などでの人間関係です。
極端に言ってしまえば、仕事場から逃れることができればストレスがかかることがありません。ですがもちろん、現実にはそう簡単にはいきません。上司が問題であれば、仕事場を変えるか会社を辞めるかしかなくなってしまいます。なお、厚労省の研究では「仕事や職業の環境でストレスを感じている」人は2020年には54.2%にもなっており、働いている人の半数を超えています。

ストレスがからだを壊す

ストレスが原因でいろいろな病気を発症してきます。その理由は、ストレスがかかるとそれに打ち勝とうとして副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)が分泌されるためです。このホルモンは短期間であればプラスに働きますが、長期間に分泌されるとからだの免疫力が衰えさせてしまいます。そうして、いろいろな病気が発症する原因となるのです。

ストレスがあると心にも変化が起きます。イライラしたり、やる気がなくなったりします。さらには不安を感じやすくなります。それが進むと、物事に興味が持てなくなり、うつっぽい気分に陥ります。

ストレスによるからだの変化として、頭痛、肩こり、腰痛などの多彩な痛みの症状が出てくることもあります。さらには、腹痛、消化器官の不調、動悸(どうき)、息切れなどが出てきて、いくら検査をしても異常が見つからないということになります。また、ストレスを発散させようと、タバコや酒の量が増えたりもします。こういった状況が長く続けば、心筋梗塞、胃潰瘍といった臓器の変化が起きてしまいます。

こう述べていると、ストレスは悪いものと考えてしまいますが、必ずしもそうではありません。
重要なことは、ストレスのかかる時間です。
例えば、今日が仕事の締め切りとなれば、頑張って仕事をやろうと思うものです。短い期間のストレスによって気力が生まれ、仕事の質やスピードが向上することもあるでしょう。こういった限られた期間のストレスは問題にはなりません。
良くないのは、いつも仕事が山積みで終わりの見えない仕事を抱えた際に感じるストレス、つまり長い期間のストレスです。これは心と体に長い期間負荷をかけるので、悪いストレスとなります。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界で一番受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。推理作家協会会員。

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