健康寿命を延ばす「無理しない思考法」

最近、耳が聞こえづらいかも――医師が勧める「聞こえ」のトラブルの対処法

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耳鳴りについて

「耳鳴り」と「難聴」は、ある程度の歳になってきますと、避けられない症状のひとつです。

まず、耳鳴りについてです。そもそも、耳鳴りとはどんなものなのでしょうか。よくある症状としては、静かなところで「ゴー、ザー、ジー」という低い音がしたり、「キーン、ミーン」という高い音が聞こえることもあります。

特徴的なのは、いつも同じようには聞こえないことです。何かに集中しているときには気にならなかったり、静かなところではかなり大きな音で聞こえたりします。体調の変化や周囲の環境で聞こえ具合が変化するのです。
一般的には「朝起きたとき」に、耳鳴りがひどく感じることが多いものです。

耳鳴りのもっとも多い原因は、「内耳の障害」によるものです。だから耳鳴りを感じたらまずは、耳鼻咽喉科を受診してその原因を調べる必要があります。他の原因には、ヘッドホンやイヤホンの過剰な音量による外傷性のものや、加齢によるものなどがあります。

治る耳鳴りもある

加齢に伴う症状と諦められてしまうことが多いため、治療できないものと思われがちでです。ですが、治療をすれば治る耳鳴りもあります。初めから「耳鳴りは治らない」と決めつけず、まずは詳しい検査を受けるべきです。

外耳道炎、急性中耳炎などが原因の耳鳴りは、薬で改善します。滲出性中耳炎、鼓膜穿孔(慢性中耳炎)や耳硬化症という病気では、手術によって改善することもあります。

耳鳴りの特殊な治療としてTRT(Tinnitus Retraining Therapy)があります。日本語では、耳鳴り順応療法と訳されています。耳鳴りはそのままで、その耳鳴りを意識させないようにするものです。
TRTにはサウンドジェネレーターという補聴器のような器械を使います。サウンドジェネレーターからは、静かな雑音が出て、普段の生活の中で、この雑音に慣れさせていきます。手順は難しいので専門的な医療機関でないと難しい治療法です。
とはいえ、こういった治療があることを知っているだけでも救いになります。

難聴の種類

難聴には、その原因によって2つの種類があります。

1つは、内耳、蝸牛神経、脳の障害によって起こる難聴で、「感音性難聴」といいます。
感音性難聴には、急に難聴になってしまう突発性難聴や騒音性難聴、加齢性難聴、生まれつきの先天性難聴などがあります。急性の難聴は早く治療することで改善する可能性があります。

もう1つは、加齢によって起こる難聴です。この「加齢性難聴」の治療は困難ですが、補聴器によって聞こえを改善することができます。
ただ実際には、補聴器を日常使っていくのが難しいことも多いものです。器械が小さいのでなくしてしまったり、扱いが面倒であったりして、高価な補聴器を買っても、次第に使わなくなってしまう場合をよく経験します。
とくに認知症があると、うまく使いこなせません。せっかく買った補聴器が無駄になるケースが結構あります。
補聴器をうまく使っていくには、周囲の環境も重要になってきます。

重度の難聴の場合は、人工内耳手術を行うことで聞こえが戻ることもあります。
外耳や中耳に問題があって、音が伝わりにくくなるのが伝音性難聴です。慢性中耳炎や滲出性中耳炎など主に中耳の病気で起こるものです。伝音性難聴は音を大きくすれば聞こえるようになるので、補聴器を使えば音を聞くことができます。

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プロフィール

米山公啓
米山公啓

1952年、山梨県生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業、医学博士。専門は脳神経内科。超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。聖マリアンナ医科大学第2内科助教授を1998年2月に退職後、執筆開始。現在も週に4日、東京都あきる野市にある米山医院で診療を続けているものの、年間10冊以上のペースで医療エッセイ、医学ミステリー、医学実用書、時代小説などを書き続け、現在までに300冊以上を上梓している。最新刊は『脳が老化した人に見えている世界』(アスコム)。
主なテレビ出演は「クローズアップ現代」「世界で一番受けたい授業」など。
世界中の大型客船に乗って、クルーズの取材を20年以上続けている。
NPO日本サプリメント評議会代表理事。推理作家協会会員。

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