膝が痛い、腰が痛い、お腹が痛い……体にちょっとした痛みを感じると、「何か、悪い病気でもあるのではないか……」と気になるものです。もちろん、「ちょっとした痛みの原因は、重篤な病気だった」ということもあるでしょう。ですが、年齢とともに多くなるのは、病院に行って調べたところで、「原因がはっきりしない痛み」です。
典型的な痛みなら、診断はそれほど難しくありません。動いたあとに胸の中央が押されるように痛いなら、「狭心症」。お腹がすくと胃のあたりが痛くなれば、「十二指腸潰瘍」。吐き気があって目の奥が痛み、それに加えて頭痛があれば、「偏頭痛」。このように、いわゆる医学の教科書に書いてある典型的な痛みなら、診断は簡単ですし、医者も間違えることもありません。
しかし実際には、原因が明確に特定できない痛みのほうが多くなります。腰の痛み、膝の痛み、なんとなく胸が痛い、指が痛いなど――痛む箇所や痛み程度があいまいな、整形外科領域の症状が増えてきます。
これは多くの場合、年齢とともに関節に変形が起こり、筋肉が減ってくるためです。このように骨や関節の変形が原因で痛みが起きている場合、手術をしてもなかなか痛みが取れず、治療もうまくいかないことが多いです。手術をして100パーセント痛みが取れることのほうがは例外的でしょう。
さらに厄介なのが、筋肉や骨とも関係のないちょっとした違和感や痛みで、この場合、さらに患者さんを悩ませることになります。
痛みや違和感があると、その原因を探したくなるものです。「昨日無理したから、今日膝が痛いのだろう」とか、「胃が痛いのは、3日前に食べた物がよくなかったのではないか」など、まずは自分の経験から探っていき、なかなか治らず心配な場合は、医師のもとを訪れます。
ただし、そのようにして、ちょっとした痛みや違和感の原因を追求し始めた人の末路は、だいたい決まっています。
いろいろな医師のところへ行くことになり、もっと効く薬が欲しくなっていきます。しかし、いろいろな検査を行っても痛みの原因はわかりません。そうなるとさらにその原因を追及したくなって、週刊誌などに出ている医師を受診したりします。やがて、痛みそのものより、「痛みの原因探しを続けたものの、わからないという不安」にさいなまれ、心の調子を乱してしまうのです。