「第二次トランプ大統領」に備え日本や世界ができること プーチン政権継続で波乱と混乱の時代か、それとも新しい<欧露民主同盟>か?

2024.02.18 Wedge ONLINE

 2024年秋の米国大統領選挙でトランプ氏が再選される可能性が出てきた。世界は国際政治、特に安全保障面で荒波に揺さぶられることになる。

 深刻で予測できないことが起きる。周知の通りトランプ氏は予てから米国外に駐留する米軍を引き上げると叫んでいた。日本やアジア、欧州などの安全保障に影響が出る。

(ChrisGorgio/gettyimages・dvids)

前政権時に“経験”していた混乱

 現に、トランプ大統領の時代に北大西洋条約機構(NATO)で問題が起きた。大統領はNATO加盟国の拠出金が少なすぎると批判し、「攻撃されても助けに行かない」、「NATOから脱退する」と脅した。

 NATOのストルテンベルグ事務総長は追想している。 「自分はトランプ大統領と4年間共に働いた。NATO加盟国の拠出金が少なすぎるとの批判に注意深く耳を傾けた。そして多くの加盟国がNATOへの貢献を増やした。欧州の同盟国はもっと貢献しなければならないというトランプ大統領のメッセージは受け止められ、正しい方向に進んでいる」と当時述べていた(「NATO、トランプ氏再選でも弱体化せず=事務総長」)。

 ストルテンベルグ事務総長は冷静な言葉使いで実際は恐ろしい危機を表現した。 一方、欧州中央銀行(ECB)総裁のラガルド氏はもう少し、率直にモノを言っている。

 トランプ再選あり得るとの報道に「ちょっと待って。先ずお茶を頂きたいわ……」と話した(’Trump Back in White House? Lagarde Says ‘Let Me Have Some Coffee’Francine Lacqua、Viktoria Dendrinou)。そしてトランプ氏が大統領在任中に欧州連合(EU)との関係を悪化させたことや、NATOからの脱退に言及していたことを想起してトランプ氏の再選は欧州への「明白な脅威だ」とハッキリ述べた('Europe should brace for ‘harsh decisions’ if Trump is re-elected, says ECB’s Lagarde'Hanna Ziady , CNN)。

欧州が危険を回避するには

 そして今回はどうなるのか? 私見では欧州は今回、別の方法でトランプ大統領の危険に対応できるはずだ。

 カギはロシアの変化である。欧州が賢明な方法でロシアに働きかけて、ロシアを西欧同盟の一部にして仕舞うのだ。そうするとNATOは存在しなくても良いことになる。つまり、トランプ氏に肩透かしを喰らわせるのだ。

 抑々、ロシアが侵略を二度としない国になれば、NATOは役割を終える。 欧州とロシアは「欧州ユーラシア不戦条約」のような新条約を結ぶことができる。 欧州側はロシアに大規模な経済的支援を提供し「欧州・ユーラシア民主同盟」のような全く新しい枠組みを作る、そういうことすら可能だ。

 欧州諸国とストルテンベルグ氏をあれ程苦しめた「大波トランプ」が再度やってくるならその「大波」を無効化する「防波堤」を構築するべきだ。欧州の自己利益のためだ。

「欧州・ユーラシア民主同盟」は可能性がある

 この3月に実施される大統領選挙ではプーチン大統領の継続が濃厚となっているが、ポスト・プーチンの時代はいずれ必ずやってくる。その時、ロシアは民主化に向かう可能性がある。多数の専門家がそれを示唆している。

 最近ではロシア生まれの経済学者で欧州復興開発銀行を経てパリ高等政治学院のセルゲイ・グリエフ教授の議論は注目に値する。同教授は昨年末ハーバード大学のデービス・ロシア研究所で講演し、ロシアの民主化は可能であるとして以下のように論じた('Russia’s Economy, War in Ukraine, and Hopes for Post-Putin Liberalization')。