上記論説の筆者は、ベトナムについて大陸グループに含めているが、同国の南シナ海における中国との対立構造、日本との関係の深化、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟、米国との関係の改善速度などから見れば、たとえ共産党体制を名目的に維持していても、以前はともかく、現在はむしろ海洋グループの範疇に入れる方が自然ではないかと思われる。
また、論説の筆者は、米国のタイとベトナムへの政策姿勢を軟化すべきであると主張しているが、米国の課題は以前より、東南アジアには全面的に精神的距離感が存在することであり、この米国にとっての課題は一朝一夕には解決できる課題ではない。ASEANの会合への首脳の出席にしても、アジア太平洋経済協力会議(APEC)やTPPをはじめとする経済的教義や連携にしても、共に協力し合う関係を築こうという姿勢に欠ける印象を与えているのはASEAN諸国全体に対してのことであり、タイとベトナムだけではない。そのことが中国に介入する余地を与えている。
日本の東南アジアとの関係の親密性は、過去半世紀にわたり他の大国を寄せ付けない水準であった。米国、それに加えて豪州やニュージーランドも、その日本に対し牽制を効かせようとする外交姿勢をとることがあり、それに引きずられて日本の東南アジア外交には米国への遠慮が散見される。
それが東南アジア諸国に日本への小さな失望感と距離感を感じさせ、ひいてはそれらが、特に経済的力を蓄えた中国に東南アジアへの接近の機会を許している。上記論説においても、書き手は日本にほとんど触れることを避けているかのようだ。
ASEANの分断には世界の現状からくる一定の必然があるが、それは日本を含む東アジア全体の将来にとって決して好ましいことではない。この際、日本は遠慮するのではなく改めて前進し、東南アジア諸国のエネルギーの相互融通を促進するなどを通じ、その分断を改めて協力の方向へ進める努力をすべきだと思われる。