ウクライナのロシアの製油所をターゲットにしたドローン攻撃が勢いを増している。英国の非営利インテリジェンス団体Open Source Centreによれば、今年8月初旬から10月下旬までの期間にウクライナ国境から2000キロメートル(約1200マイル)圏内に所在するロシアの製油所が60回以上攻撃され、9月は31回を数えた。
ロシア全土38カ所の製油所の実に25カ所が攻撃対象となり、ウクライナ国境から約1300キロメートル(約800マイル)離れているレニングラード州キリシ製油所(原油処理能力40万バレル/日量でロシア第二位の規模)やロシア西部リャザン製油所(同38万バレル/日量でロシア第三位の規模)といった大規模な製油所が複数回の攻撃に晒されている。
製油所のみならず、ポンプステーション、貯蔵設備、石油輸出ターミナルといったエネルギー施設に対してもウクライナはドローン攻撃によりダメージを与えることに成功。複数の製油所へのドローン攻撃により、ロイターの試算によると今年9月末までにロシアの製油能力の約21%(140万バレル/日量)が停止したとされ、ダメージの度合いはさらに増している可能性がある。
直近数カ月、ロシアの製油所へのドローン攻撃が劇的な成功を収めている理由として、二つの要因があげられる。
一つ目は、ウクライナによる「ドローン攻撃の航法や誘導技術の高度化」だ。ロイターの報道によれば、ウクライナが国境を越えて行うドローン攻撃の航法および標的設定には複数の手法が用いられている。
主な方法の一つは、ドローンが搭載されたカメラを使い、地上の地形を事前に読み込まれた地図と照合する「目視航法」である。この方法はGPS誘導とは異なり、ロシアの電子戦システムによってハッキングされたり妨害されたりすることがないという。
もう一つの一般的な方法は、妨害信号を遮断するよう設計された高度な衛星航法アンテナの使用である。これにより、ドローンは妨害や混乱を受けることなく、宇宙空間の衛星から自身の正確な位置情報を受信し続けることが可能とされる。
作戦には通常、爆薬を搭載し標的に鋭角かつフルスピードで突入するよう設計されたドローンが20~30機ほど投入されるが、状況に応じて、ロシアの防空網を消耗させるために、少数の囮ドローンが先行して飛ばされるという。ドローンの編隊がさらに大規模になることもあり、ゼレンスキー大統領は10月初旬の記者会見で、「1回の作戦で最大300機のドローンが投入された」と述べた。
ロシアの製油所には、対ドローン用のネットや防御用の構造物が導入されているが、ウウクライナの精緻な攻撃手法に対して十分な防御効果を発揮できていない。
二つ目は、「米国トランプ政権によるロシア本土攻撃への容認・支持」だ。バイデン前政権は、ウクライナによるロシア本土への攻撃は、エスカレーションへの懸念から否定的な立場をとっていた。特にロシアの製油所といったエネルギーインフラへの攻撃には慎重であったとされる。
トランプ大統領のロシア、ウクライナ両国に対する態度や発言は一貫していないが、今年8月、アラスカでの米露首脳会談後、ウクライナでの戦闘を止めないプーチン大統領に痺れを切らし、自身のSNSトゥルース・ソーシャルに「侵略国を攻撃しなければ、戦争に勝つことは非常に困難、いや不可能だ。まるで素晴らしい守備を持つスポーツチームが、攻撃を禁じられているようなものだ。これでは勝ち目はない!」と投稿。ウクライナによるロシア本土への攻撃を容認・支持する姿勢を明確にした。