ハンターは減っている?クマ問題に欠かせない人材の実情、駆除数は増えるも極めて厳しい現場

2025.12.15 Wedge ONLINE

極めて難しい猟銃によるクマの駆除

 今年4月には、市町村の判断で市街地での猟銃の使用を可能とする改正鳥獣保護管理法が成立し「緊急銃猟制度」ができた。

 通常のイメージでは、クマの駆除と言えばライフルを使用する遠距離射撃だろう。射程は100~400メートル(m)ほどだが、クマは急所に当たらなければ、すぐに倒れず反撃に出ることが考えられる。100mぐらいなら数秒で詰めると言われるが、その間に第2弾、第3弾を発射して仕留めねばならない。

 市街地に入ってきたクマを探して駆除するとなると、距離ははるかに近くなる。人家や田畑、公園の茂み……などに潜んでいる可能性があり、捜索するハンターとの距離はかなり近い。そして突如襲いかかられることも想定しなければならない。

クマの駆除は今や山の中ばかりではない(WEDGE)

 これまでのケースだと50m以下、ときに3~5mの距離で出くわすこともあった。一発で仕留めないと致命的だ。ハンターも相当な心得や技術を要求される。だから複数で行うのが普通だ。

 なお市街地で使用するのは、ライフルではなく散弾銃である可能性が高い。散弾銃は、通常は小さな数百粒の散弾で鳥などを狙うが、ここで使用するのは単発のスラグ弾だ。

 弾道が安定していて、近距離なら威力がある。しかもライフルと違ってセミオートで3連射できるものが多い。目の前のクマに対応しやすいとされる。

 いずれにしてもクマを駆除できる人材が、極めて少ないことは間違いない。

退役自衛官や警察OBの活用

 そこで注目を集めるのが、自衛隊や警察など銃の経験者だ。ただ自衛隊が害獣を駆除するのは法的に難しい。その点、警察ならすぐに人命救助の点から法的にクリアしやすく、機動隊にはライフル射撃に長けた隊員もいる。

 そこで警察に「熊駆除対応プロジェクトチーム」が結成されて、11月からクマの出没が多発する秋田県や岩手県に運用されている。

 だが、こちらも簡単でない。まず警察のライフルはテロ対策用で口径が小さく、弾丸も貫通するためクマなど大型動物には効果が弱い。銃の口径や弾丸をクマ対応用に変えると、弾道も従来とは変わってくるので射撃に一定の訓練が必要となる。

 しかも駆除に臨むためにクマの行動や性質などの知識も身につけなくてはならない。やはりクマ撃ちのベテランハンターの研修を受ける必要がある。

 また退役自衛官や警察OBを雇用することも考えられているが、いずれにしろ再訓練は必要だろう。

どうハンターを養成するのか

 長期的に狩猟免許所持者を増やす試みも行われている。各地の自治体で行政がハンター養成に動き出した。兵庫県は「狩猟マイスター育成スクール」を実施したほか、鳥取県や熊本県などは狩猟免許を取得する際にかかる費用を補助する制度をつくった。ほか猟友会が講習会を実施するところも増えている。

 一方で、せっかく免許を取得したのに、実際の狩猟には出ていないペーパーハンターへの支援もある。小田急電鉄はそうした人々への講習のほか被害農家と結びつけて有害駆除を担ってもらう「ハンターバンク」事業を展開する。

 また狩猟免許や各地の狩猟登録をするのに結構な金額がかかることも問題だ。銃の取得は多くの証明書類と講習会出席、試験などが必要で、多額の手数料がかかる。銃自体も高額であることは言うまでもない。

 弾丸も安くないし、義務であるガンロッカーの設置、射撃練習、そして3年ごとの技能講習などを伴う更新手続……実に煩雑で負担が大きい。加えて狩猟税もある(有害駆除を行う場合は免除される場合もある)。

 こうした金銭負担と手間は決して軽いものではない。趣味の狩猟とは分けて、有害駆除に従事する人への減免制度も必要ではないか。

 すでにガバメント(公務員)ハンターの養成も課題に上がっている。また民間でビジネスとして有害駆除を担う認定鳥獣捕獲等事業者もいる。ただ現実には猟友会との兼ね合いもあって、上手く機能していないところが多い。それらの制度を整理して十分に活躍できるようにすることを考えるべきではなかろうか。