2025年11月26日付フィナンシャル・タイムズで、ロビン・ハーディングが中国は欧州から買いたいものがないという、それでは中国との貿易は不可能だ、解決策は中国側にしかない、それができなければ欧州は難しい選択に迫られると述べている。
最近、中国の経済学者、財界人に、「中国は世界の他の国々から何を買いたいか」と問いかけた。数人は「大豆や鉄鉱石」と答えたが、それは欧州にとっては余り有益ではなかった。
「高等教育」という答えも多かった。何人かの経済学者は、「だからこそ、中国企業に欧州で工場を建てさせるべきだ」と言った。これら答えの本音は、世界から買うものは何もないということだった。
中国は、輸入したいと思うものは何もなく、自国の方がより良く、より安く作れると信じて疑わない。外国に頼りたいものは何一つないということだ。
今のところ、中国は半導体、ソフトウェア、民間航空機、そして最も高度な生産機械を海外から買っている。中国はこれら全てを開発していて、いずれ自国で製造し、輸出するようになるだろう。中国人の結論は、「それは中国の責任ではありません」、「米国が輸出規制をして、我々を封じ込めようとしているので、中国人は不安になる」ということだった。
しかし、これに対して問いたいのは、「もし中国が世界から何も買いたくないのなら、我々は如何に中国と貿易できるのか」ということだ。欧州や日韓、米国の労働者は仕事が必要だ。中国への輸出が出来なければ、中国からの輸入の代金を払うこともできなくなる。それは、中国も認識し、中国が大量に保有するドル資産が下落したり、デフォルトしたりすることを心配している。
最近ゴールドマン・サックスが、2035年の中国経済の規模についての予測を上方修正した。通常、どの国であれ成長予測が上方修正されれば他国に恩恵をもたらす。しかし中国の事例では、中国の成長は輸出に由来し他国の市場を奪う形で成長する。
売るだけで買わないという重商主義的姿勢にどう対処すべきか。解決策は中国の側にしかない。
自国経済のデフレを克服し、国内消費への構造的障壁を取り除き、為替レートの上昇を許し、産業に向けた数十億ドル規模の補助金や融資をやめることだ。しかし、中国の次の5カ年計画の中央委員会勧告を見れば、変化は期待できない。確かに「消費」は優先リストの3番目にあるが、1番と2番は「製造業」と「技術」だ。
そうなると、欧州に残されるのは一つの困難な解決策と一つの悪い解決策だ。困難な解決策とは、競争力を高め、新たな価値の源泉を見つけることだ。改革を進め、福祉を削り、規制を削減することが必要になる。しかし、それは、中国があらゆるものを安価に輸出し、輸入には関心を持たない世界では十分ではない。
結局、国内需要に頼らざるを得なくなる。悪い解決策とは保護主義だ。特に欧州は、産業を保持しようとすれば大規模な保護に向かわざるを得ない。これは有害で危険な道だ。
中国は、他の国が貿易障壁を築けば攻撃的に報復するだろう。それでは世界貿易体制は崩壊する。
良い選択肢がなくなれば、残るのは悪い選択肢だ。中国は貿易を不可能にしている。もし外国からは資源や消費財以外に何も買わないのであれば、他国も同じ準備をするしかない。
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興味深い問題提起である。ハーディングは、今の中国は、輸出はどんどんやり、輸入については「海外から買うものがない」と言い、同時に国内であらゆる製造業を築こうとしていると指摘し、それでは「貿易は成り立たない」と言う。