米有力紙ニューヨーク・タイムズ(電子版1月6日付)は、マルコ・ルビオ国務長官兼大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を含めた政府高官が、もし米国が反体制派指導者を支持すると、ベネズエラはさらに不安定化し、国内に強靭な軍隊のプレゼンスが必要になると議論し、トランプを説得したと報じた。トランプの焦点は石油の権益獲得にあり、ベネズエラの民主主義や自由主義の促進ではないのだ。たとえ独裁政権であっても、米石油企業の石油アクセスの保証がなされればよいのである。
トランプは、今回の地上作戦の狙いについて、石油権益と明言した。反米のベネズエラ政府によって、同国に進出していた米石油企業の資産が「盗まれた」と訴え、石油インフラの修復を行うとも述べた。その裏には、トランプと米石油企業の癒着があり、利益の一部がトランプの政治団体に献金として流れ、最終的には彼とトランプ一族の繁栄につながるという「金の循環」があるとみてよい。
一方、ベネズエラ政策の立案者と言われ、同国の政権交代を強く訴えてきた強硬派のルビオは、ベネズエラの先に見ているものがある――キューバ政府の転覆だ。
「ウクライナとロシアの和平交渉『タンゴは2人で踊るもの』」で紹介したが、ルビオはキューバのバティスタ独裁政権から南部フロリダ州マイアミに逃れた移民の両親を持つ。ルビオはバーテンダーの父親とホテルの掃除係の母親の下で育った。ルビオが独裁政権打倒と民主主義および自由主義の擁護を信念としているのは、両親の影響が強いと言える。
キューバに原油を輸出しているベネズエラ政権を転覆させ、キューバの政権に多大なダメージを与えるという計算がルビオにあったことは間違いない。
ベネズエラへの地上作戦に関して、「金儲け」と「領土拡大」の双方の意欲が強いトランプと、キューバ政権の転覆を図るルビオ――2人は2本の異なったレール(two tracks)を走っている。「同床異夢」というところだ。
トランプは、次の軍事攻撃の標的にコカインを生産し、“米国に密輸”しているコロンビアのペトロ政権を挙げている。キューバ政権転覆を狙うルビオは、イデオロギーよりも「実利」を最優先するトランプを説得しなければならないだろう。キューバの観光産業や不動産を“餌”に、トランプ一族に実利がもたらされるというメリットを強調するという手法もある。
今回のベネズエラ地上作戦に関する批判に、ルビオは三大ネットワークで「米軍はたった2時間、地上にいただけだ」「米国はベネズエラと戦争をしていない。麻薬密輸業者と戦争をしているのだ」「ベネズエラはイラクやリビアとは違う」などと反論した。
今後、ベネズエラの国家“運営”が機能しなかった場合、近い将来、大統領の職を狙うルビオにとってマイナス要因となることは間違いない。11月3日の中間選挙や、2028年大統領選挙で共和党候補にもプラスに働くことはない。
トランプは昨年、カナダを併合して51番目の州にすると述べ、グリーンランドとパナマ運河については、取得の意欲を示した。今年に入り、グリーンランド取得に関しては、国家安全保障上の問題というこれまでの議論を強調し、さらなる意欲を見せている。
昨年12月に公開された米国の「国家安全保障戦略」は、米国は西半球を勢力圏とみなし、そこで卓越した地位を保つと明記している。また、同戦略ではモンロー主義を重視する。モンロー主義は、1823年に第5代米大統領ジェームズ・モンローが唱えた米国と欧州諸国の相互不干渉主義である。トランプは19世紀のモンロー主義を21世紀の今、取り入れ、軍事力と脅しおよび恐怖心で、西半球において領土を拡大し、同盟国や友好国、敵国に関係なく、南北アメリカ大陸の国々を米国に従わせようとしている。国際法を無視した「21世紀版トランプ流モンロー主義」である。それは、危険極まりない主義である。