ベネズエラへの地上作戦実施――新たな戦争をするトランプ、なぜトランプは「アメリカファースト」を“捨てた”のか

2026.01.10 Wedge ONLINE

 というのは、習近平国家主席が、21世紀版トランプ流モンロー主義を通じてディール(取引)を成立する可能性は排除できないからだ。中国が米国の勢力圏である西半球に干渉しない代わりに、米国は東アジアに手を出さないという「米中の相互不干渉主義」である。

 ロイター通信によれば、ベネズエラの原油の最大の輸入相手国は中国であるが、中国側からみると、原油の総輸入に占めるベネズエラ産原油の割合は4%にすぎない。ベネズエラからの輸入が減少ないし途絶えても、中国はロシア、サウジアラビア、イラク、マレーシアなど他国からの原油輸入で補足でき、影響は小さいと言われている。

 また、台湾との「完全な統一」は習の決意であり、大きなレガシー(政治的功績)にもなり、ベネズエラ救済よりもはるかに意義が大きいことは明らかだ。21世紀版トランプ流モンロー主義に基づいた南米と東アジアのディールはあり得る。

 習は、21世紀版トランプ流モンロー主義を都合良く利用して、米中の確固たる勢力圏を確立する――これは、日本と台湾にとって最悪のシナリオになるだろう。21世紀版トランプ流モンロー主義とベネズエラへの地上作戦は、勢力圏の分割と明確化により、新たな世界秩序の構築に向かっている。

 今春、ワシントンを訪問し、日米首脳会談を行うことになった場合、高市早苗首相は米中が大接近し、21世紀版トランプ流モンロー主義を通じて勢力圏のディールを成立させないようにトランプを説得することが、高市の第一の責務になる。

トランプは「新たな戦争をする」

 トランプは記者会見で、ホワイトハウス担当記者に対してベネズエラ軍事侵攻は「アメリカファースト」であると強調した。その理由に、麻薬対策と石油権益を挙げた。

 しかし、1月5日まで連邦下院議員であったマージョリ―・テイラー・グリーン氏は、2026年1月4日の米NBCニュースとのインタビューの中で、ベネズエラへの軍事攻撃は「アメリカファーストではない」と述べた。トランプとエプスタイン問題で決別する前までは、グリーンはMAGAのスーパースターと言われ、トランプに忠誠心を示してきた人物であり、トランプを熟知している人物でもある。

 グリーンによれば、元来のアメリカファーストは、物価や雇用および医療保険料などの国内政策を最優先する。麻薬に関しては、彼女は米国内で最大の問題となっているフェンタニルの約70%は、ベネズエラではなく、メキシコから入ってくると指摘した。

 また、グリーンは、トランプは「普通の米国人ファースト」ではなく、「政治献金者ファースト」であると非難した。ベネズエラに関しては、政治献金者とは大手米石油企業を指しているのだろう。

 さらに、昨年12月29日に掲載されたニューヨーク・タイムズ(電子版)とのインタビューで、グリーンは2026年の展望について聞かれると、任期が残り3年になり、トランプは「新たな戦争をする」と答えた。トランプの影響力が低下し、レイムダック状態に陥ることを避けたいのであるとみていた。

 グリーンは、権力を維持したいトランプは、これから戦争を起こす可能性が高いと予想した。年が明け、トランプは実際、ベネズエラに対し地上戦を実施した。

 2016年米大統領選挙でトランプが看板政策として訴えた従来のアメリカファーストでは、今後、権力を強化できないのだ。それから10年を経て、アメリカファーストの質が根本的に変わることになった。西半球における勢力圏確保とモンロー主義は、トランプ本人の権力維持のための単なる口実に過ぎないのだ。

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