ロシアと中国が牛耳るベネズエラ、米国の“掌握”で石油はどこに行くのか?注目される「世界の製油所」インドの動き

2026.01.15 Wedge ONLINE

 トランプ政権がベネズエラでの石油増産を急ぐ背景には、同国の原油を国際市場に再流通させることで、原油価格の引き下げを図る狙いがある。ロイター通信によると、トランプ大統領は1月6日、面会した共和党の下院議員らに対し、ベネズエラ産原油の供給拡大が米国民のエネルギーコストの軽減につながると強調したという。

 トランプ大統領は25年1月の再就任以降、インフレ対策の一環としてエネルギー価格の引き下げを重視してきた。地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」からの離脱を指示する大統領令に署名し、バイデン前政権が推進していた気候変動政策を見直した。これに伴い、米国内での石油・天然ガス産業に対する規制緩和を進め、増産体制の強化を図っている。

 さらに、25年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)では、石油輸出国機構(OPEC)諸国に対し原油の増産を要請し、国際市場における価格引き下げを働きかけた。トランプ政権の動きに反応する形で、自主減産を実施するOPECプラスの8カ国は同年3月のオンライン会合で、減産規模を段階的に解除(つまり増産)することに合意した。

 原油価格の下落は、米国内のガソリン価格を引き下げる効果を持ち、結果としてインフレの抑制にもつながる。この展開は、26年の中間選挙を見据えるトランプ政権にとって、政権基盤の強化や支持拡大に資する重要な要素といえる。そのシナリオを実現するためにも、同政権にとってはベネズエラの石油部門を掌握し、産油量の早期回復を実現することが鍵となる。

中国経済への影響は?

 一方、米国によるベネズエラ石油部門への管理強化により、中国がベネズエラ産原油を輸入することは一層困難になる可能性もある。世界最大の原油輸入国である中国は、制裁下にあるロシア、イラン、ベネズエラからの割安な原油を主要な調達先としてきた。だが、米国が輸出管理を厳格化したことで、ベネズエラから中国への原油供給は今後さらに抑制される見通しだ。

 この影響は特に、中国の独立系製油所にとって深刻である。これらの製油所は、安価なベネズエラ産原油に依存してきた。しかし、出荷停止に伴い、26年3月と4月にはロシア産やイラン産原油への切り替えを進める可能性が高いと報じられている。 

 一方、中国のベネズエラからの原油輸入量は、直近25年1月~11月データで224万バレルにとどまっている。ベネズエラにとって中国は最大の原油輸出先であるものの、中国側にとってベネズエラは第34位の原油供給国に過ぎず、主要な供給元トップ10にも含まれていない(図2)。このことから、中国はベネズエラ産原油の輸入が停止した場合でも、他の供給先からの代替調達が可能であり、輸入停止の影響は限定的であると考えられる。

注目されるインドの動き

 ベネズエラ産原油の輸出先で注目すべき国はインドである。インドの近年の石油政策については、22年2月のウクライナ戦争開始以降、国際的な制裁の影響で価格が割安となったロシア産原油の輸入を大幅に拡大させた。

 ロシアからの原油輸入量は同年3月以降増加を続け、24年10月には月間1038万トンと過去最多を記録した。その結果、従来の主要供給元であった中東諸国を上回り、23年以降はロシアがインドにとって最大の原油供給国となっている。

 ロシア産原油の確保は、石油の安定確保や中東産への依存低減にもつながった。また、石油製品輸出国としてのインドの地位向上にも寄与している。

 インドは、世界有数の石油製品輸出国として、各地から調達した原油を精製し、約160の国・地域に供給している。特に、ウクライナ戦争によってロシア産石油製品が国際市場から排除される中、インドは欧州市場への輸出を拡大しており、高い精製マージンも相まって、その存在感を強めている。

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