トランプがグリーンランド領有を諦めない理由、本当に欲しがっているものは何か?民間企業に任せられない事情

2026.01.21 Wedge ONLINE

 トランプ大統領が、またグリーンランドを領有したいと言い出した。1期目の2019年に続き、2度目だ。前回は購入の打診だった。今回は、購入できないのであれば領有の方法として軍事行動の可能性も排除しないと強硬姿勢になっている。

トランプ大統領が領有を求めるグリーンランド。何があるのか?(筆者撮影)

 グリーンランドを自治領として持つデンマークも、当事者のグリーンランド自治政府も「売り物ではない」として応じる気持ちはない。

 領有したい理由は、米国の安全保障の強化だ。トランプ大統領は、「ロシアと中国の船がグリーンランド近海にはうじゃうじゃいる。米国が占有しなければ、ロシア、中国に占領され安全保障が損なわれる」と発言しているが、実態はずいぶん違うようだ。

 前回トランプ大統領がグリーンランド領有を持ち出した際には、実際に中国企業がグリーンランドに進出し、関係を深めていた(『トランプ大統領が何と言おうと、中国に頼るグリーンランド 世界のレア・アースを握る中国 影響は日本にも』)。

 しかし、グリーンランド自治領政府とデンマーク政府は、トランプ大統領の提案後米国との関係を考慮したのか、インフラ開発から中国企業を排除するなど中国との関係を薄める努力をしたようだ。欧州からの報道では、今グリーンランドと中国との関係は希薄になり、近海に中国とかロシアの船舶が多い事実はない。

 ではなぜグリーンランドが必要なのだろうか。米国は19世紀からグリーンランドを購入したいとデンマークに提案したことが何度かある。世界最大の島グリーンランドが安全保障上重要な地理的位置を占めているからだ。

 トランプ大統領は、自身が25年5月に提案した早期警戒防衛レーダシステム「ゴールデン・ドーム」にとりグリーンランドは重要と主張している。

 実は、軍事上もう一つ重要なのは、レアアースのサプライチェーンの確保だ。グリーンランドには豊富なレアアース資源がある。

本当に欲しいのはレアアース?

 トランプ大統領の狙いはレアアースをはじめとする資源だろう。1980年代半ばまで米国が世界のレアアースのサプライチェーンの過半を握り、中国の影も形もなかった。

 しかし、中国は巧みな戦略により他の供給者を締め出し今世界のレアアース供給の9割以上のシェアを握っている。最近の日本向けの輸出制限にみられるように、時としてレアアースを武器として使う。「お前の運命は俺が握っている」との脅迫だ。

 レアアースがなければ、風力発電設備も電気自動車も作れない。要は、エネルギートランジッションと呼ばれる二酸化炭素を排出しないエネルギーの利用拡大にはレアアースは欠かせない。

 エネルギー転換以上に重要なのは、軍事だ。ミサイルにも戦闘機にもレアアースが必要だ。米国国防総省(戦争省)が必要とする20以上の装備がレアアースを使っているとされる。

 レアアースの供給者が米軍の装備の整備状況を知ることができるのは、国防上の大きな懸念だ。つまり、中国に手の内を知られる安全保障の問題だ。国防総省の最優先課題はレアアースのサプライチェーンの脱中国だ。

 それにしても、なぜ領有まで必要なのだろうか。同盟国企業がレアアースを開発、生産すれば米国の安全保障の懸念は和らぐはずだ。

 米国がグリーンランド領有を譲らない大きな理由は、民間企業による開発が難しいグリーンランドの自然条件と環境意識が高い自治政府にありそうだ。あとで詳細に触れたい。

深まる同盟関係の亀裂

 デンマーク政府は「グリーンランドは売り物ではない」とし、グリーンランド自治領では8割から9割の住民が米国への帰属に反対している。ちなみに、ロイターによると米国でもグリーンランド占有に「賛成」は2割以下、約5割が「反対」、残りが「分からない」だ。

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