イギリス国民の半数以上が「Brexitは間違いだった」との世論調査も…あの国民投票から10年、変わるEUと周辺国の関係、イギリスが模索する立ち位置

2026.01.23 Wedge ONLINE

 Economist誌(電子版)が、2026年の世界を展望する特集記事の一つとして、「16年の欧州連合離脱(Brexit)の国民投票は欧州との関係における英国の位置を恒久的に決着させた訳ではないように思われる。次の2、3年は世界的な地政学上の変化が双方を相互近づけるように働く可能性が高い」という記事を掲載している。要旨は次の通り。

(ffikretow/gettyimages)

 26年はデビッド・キャメロンによる16年のBrexit国民投票から10年目にあたる。

 世論調査によれば、56%もの多数がBrexitは間違いだったと考えているが、Brexitを逆戻りさせることは三つの理由で簡単ではない。第一に、16年以前に立ち戻ることは不可能である。英国は再度加盟を申請し、条件を交渉することになるが、リフォームUKと保守党は強く反対するので無理難題である。英国は欧州連合(EU)予算のリベートを再び手にすることは出来ないであろうし、ユーロに加わることに同意する必要があるかも知れない。

 第二に、EUは16年以来著しく変わった。EUは外交・安全保障政策で遥かに活動的になり、多数決を多用し、大きな借り入れを含め予算は大きくなっている。

 第三に、労苦を強いられる論議を再開したいと思う向きはほとんどない。その代わり、スターマー政権はEUに接近する実際的な方法を追求している。スターマーは食品と植物防疫の基準をEUのそれに揃え、エネルギーや環境の共通のルールに合意することによってさらに貿易上の障害を緩和することを試みている。

 地政学上の情勢がEUと緊密な協力を進める根拠を提供している。ロシアのウクライナとの戦争、ドナルド・トランプの奇矯な第二次政権、中東の緊張、これらすべてが強力で共通の欧州の対応を一層切迫したものとしている。

 米国の安全の保証への依存を低め欧州の国防支出への依存を高める必要性も同じ方向を示している。Brexit後の英国は、米国とカナダ、およびアジア・太平洋とのつながりを改善したいのかもしれないが、英国は欧州の防衛と安全におけるキープレーヤーだ。

 EUとの関係は何処に向かうのか? EUが従来よりもリラックスした状態であることは助けになる。

 Brexitは他国の離脱を促すことになるかも知れないという初期の恐怖は大方消失した。EUは単一市場のインテグリティを守ることを依然欲しているが、非加盟国による少々の「つまみ食い」に従来と比べてオープンである。

 スイスとの関係のような部分的なメンバーシップの新たな形態は、EUが東方に向けてさらなる拡大を検討するにつれ、より受け入れ可能に思えるかもしれない。国境を越えた人の移動の自由を維持することすら、幾つかのEU加盟国が国境コントロールを静かに再び導入するに至っている。

 その先には、非常に異なる形態の関係の可能性がある。ノルウェーやアイスランドのような非加盟国がEU加盟の可能性について長く休眠状態にあった論議を再開しつつある。西バルカン諸国、モルドバ、ウクライナがEUとのより密接なつながりを欲しているが、このつながりは長期にわたり完全なメンバーシップには満たないものかもしれない。ハードなBrexitよりも英国にとって都合の良い異なる形状の関係が浮上することもあり得よう。

 振り返れば、16年の国民投票は欧州プロジェクトにおける英国の位置を恒久的に決着させた訳ではないとみられることになるかも知れない。英国とEUの関係は、時間を経て変化を続けるであろう。そして、次の2、3年は双方を相互に遠ざけるのではなく近づけるように働く可能性が高い。

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