イギリス国民の半数以上が「Brexitは間違いだった」との世論調査も…あの国民投票から10年、変わるEUと周辺国の関係、イギリスが模索する立ち位置

2026.01.23 Wedge ONLINE

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覆水盆に返らず

 EUからの離脱の是非を国民の判断に委ねた16年の国民投票は無謀だった。今や国民の半数以上がBrexitは間違いだったと考えていることは事実である。だからと言って、Brexitを逆戻りさせ元の鞘に収まることがほぼ不可能な理由はこの記事が指摘する通りである。

 ロシアのウクライナ侵略やトランプ政権の奇矯な政策運営といった地政学上の情勢の故に、英国とEUの緊密な協力関係を構造的に確かなものとする切迫した必要性はあるが、覆水盆に返らずということである。

 いずれにせよ、スターマー政権にBrexitの逆転という国論を分断する問題を持ち出す体力があるとは考えられない。スターマーは分野毎に実際的な方法でEUとの協調体制を固めることを模索している。しかし、必ずしも巧くは行っていない。

 欧州の防衛と防衛産業の強化のためのEUのSAFE(EUが総額1500億ユーロの融資をもって加盟国の兵器調達を支援する枠組み)に英国が参画する試みもその一つである。去る5月の英国とEUの首脳会議で双方の間の「安全保障・防衛パートナーシップ」に合意した際、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、このパートナーシップはSAFEの枠組みでの「共同の調達」に英国の参加の道を開くと述べたが、その後の交渉は11月には頓挫した。その要因の一つは英国の防衛産業の参加が及ぼすフランスの防衛産業へのインパクトというフランスのいつもながらの執着にあったらしい。

EUの拡大策へも変化

 上記の記事は、次のような変化の過程で、将来的には、EUとの関係を律する非常に異なる形態(EUの完全なメンバーシップに至らない形態)が浮上する可能性があるとの観察を書いている。EUは西バルカン諸国への拡大を目指しているが、これら諸国が加盟基準を充たすことは容易ではない。

 ウクライナ和平との関連でウクライナを緊急にEUに吸収する必要に迫られることがあるかも知れない。ノルウェーとアイスランドは、欧州経済領域(EEA)を通じてEUの単一市場のルールを受け入れ単一市場に参加している一方、EUの政策決定には何ら関与出来ないという中途半端な立場にあるが、これに変化が生ずる可能性がある。

 EU加盟に関するノルウェーの世論は反対:48%程度、賛成:35%程度で今なお反対が多いが、地政学的な変化に対応するため、北大西洋条約機構(NATO)だけでなくEUにも加盟すべきだとの意見が強まっている様子で、その差は縮まる傾向にある。国内の議論が今後発展する兆候はある。アイスランドでは遅くとも27年中にEU加盟交渉を行うことにつき国民投票が予定されている。

 いずれ英国にとって都合の良いEUとの関係を律する新たな形態が出て来る可能性もあろう。しかし、例えば西バルカン諸国に適用可能な形態であっても、それを英国のような主要国に適用することをEUが肯んじるとは思われない。

 EU外縁の諸国との異なる形態の関係は、多少なりともこれら諸国の「つまみ食い」を許容するものとなろうが、英国のような非加盟の主要国の「つまみ食い」にEUが過敏に反応することは、上述のSAFEのケースにも明らかである。

 26年は英国とEUとの貿易・協力協定の5年毎のレヴューの時であるが、英国とEUの関係をレヴューするといった大袈裟な機会を提供するものではない。16年の国民投票は、欧州プロジェクトにおける英国の位置を恒久的に決着させた訳ではないのかも知れない。英国とEUの関係の落ち着きどころを探る作業はこの先長く続かざるを得ないように思われる。

 

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