最近の米国政治はまさに、「一寸先は闇」である。共和党随一の親トランプ派として知られたマージョリー・テイラー・グリーン下院議員がエプスタイン文書や米国のイスラエル支援をめぐってトランプ大統領と決別して議員辞職を表明する一方、ニューヨーク市長選の最中に激しくトランプ批判をしていたゾーラン・マムダニ氏が当選後にはホワイトハウスに招かれ、友好的に大統領と会話をするなどはその象徴である。
関税政策に端を発する物価上昇などにより、トランプ氏の支持率が低下する中、今年の秋に控えている中間選挙では、共和党の議席減が視野に入り始めている。それでもなお、トランプ氏の熱烈な支持層であるMAGA派が支持を続けるのかが注目される。
MAGA派の動きも重要であるが、もう一つ注目すべきなのが、ニューライト(新右翼)と呼ばれる右派のインテリ層である。知識人であるかれらは、人びとの暮らしとは別に、抽象的な思考をめぐらせる半ば浮世離れした存在である。だが、かれらの描く米国のヴィジョンはトランプ政権に確実に影響を与えており、長期的な視点からみて米国の行く末を左右している。米国の現在を考えるうえで、決して無視できない存在である。
現在のニューライトは、歴史的には第3のニューライトと呼ぶことができる。第1のニューライトと呼ぶことのできる右派のインテリたちは、戦後の1950年代に登場した。かれらはフランクリン・ローズヴェルト大統領が始めたニューディール政策による連邦政府の肥大化を批判し、無神論の共産主義への反対からソ連に対する強硬路線を支持して米国の介入主義を後押しした。
60年代から70年代にかけては、米国社会の世俗化に反発する、より若い世代の保守が登場した。反エリートで社会保守の色彩が強いかれらは、第2のニューライトを形成した。2つのニューライトは80年代、共和党のレーガン政権、そしてジョージ・H・W・ブッシュ政権を下支えし、小さな政府と自由な市場経済の米国を擁護していった。
転機は90年代から2000年代である。ソ連の解体後も引き続き対外的な介入を続け、ついには01年9月11日の同時多発テロ事件をきっかけとしてアフガニスタンとイラクへの軍事作戦に乗り出した米国のあり方をめぐって、右派の内部はネオコンを支持する側と、かれらに反発する側に分裂していった。国内的には文化や宗教をめぐる価値観の多様化と、リベラルと保守の間の衝突がますます激しくなっていき、それは「文化戦争」と呼ばれるほどの対立を生み出していった。
このような国内外の変化をめぐって右派内部に生じた対立から、第3のニューライトと呼ばれる様々な新しい右派の思想潮流が姿を現していったのが10年代だった。自由な市場と小さな政府を擁護し、政府が社会保障や公共事業に積極的に支出するニューディール以来のリベラリズムを批判する従来のニューライトとは異なり、第3のニューライトは文化保守の立場から、宗教や文化の面で政府が社会に積極的に口出しすることを求めるばかりか、「自由の国・米国」の理念的な礎ともいえる自由主義をも放棄する時期に来ているとまで主張している。
自由な市場と小さな政府は、共和党とその支持者たち、そして右派のインテリ層にとって何よりも擁護すべきものであり、それを支えていた思想こそ、建国期以来の自由主義だった。