トランプ大統領が同盟国や友好国に対して傍若無人にふるまい、中国が着々と強靭な経済を構築する中、欧州やカナダは貿易相手の多様化を図っていると、 2026年1月15日付ワシントン・ポストで同紙コラムニストのファリード・ザカリアが論じている。
再選されたトランプ大統領がここ100年近くで最も高い関税を打ち出すと、欧州は反撃すると思われた。しかし欧州は反撃の誘惑に抗して圧力を吸収し、状況悪化を回避した。この抑制によって世界経済は下降スパイラルに陥ることを免れた。
欧州連合(EU) は、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイとの貿易協定を承認し、批准されれば、人口規模で世界最大級(7億人以上)の自由貿易圏が出現する。また、最近 EU と中国は、電気自動車・補助金・市場アクセスに関する広範な対決に発展しかねなかった貿易摩擦を解消させる動きを見せている。
欧州は、今や中国を必要なパートナーと見ている。欧州は東南アジアへの働きかけも加速させている。EUはシンガポールおよびベトナムと貿易協定を結び、インドネシアとも交渉を妥結し、さらにこの地域の他の国々とも協議を進めようとしている。
多様化への動きは欧州以外でも広がっている。カナダは30年もの間、自国の未来は米国との経済的・外交的・政治的統合の深化にあるとする戦略を採用してきた。24年のカナダの輸出の75%以上は米国向けだった。
しかし、トランプによる関税や貿易協定見直しの脅し、カナダ併合の宣言で、カナダは米国との関係を再考せざるを得なくなり、カーニー首相は米国と距離を置く姿勢を明確にした。また北京を訪れたアナンド外相は、「貿易相手国を多様化させ、今後10年で米国以外の国・地域との貿易を少なくとも50%増やす必要がある」と述べた。
中国の輸出は、対米輸出の大幅な減少にも関わらず、全体では引き続き増え、25年には南米、アフリカ、欧州、アジアへの輸出の急拡大によって貿易黒字はほぼ1兆2000億ドルに達した。トランプ関税によって中国が世界から孤立する事態は起きておらず、むしろ多くの国は中国との貿易を続けるよう促された形だ。
欧州外交評議会の世論調査によれば、インド、ブラジル、南アフリカでは、米国主導のブロックに加わることに賛同する人は2年で15~19%も減っている。欧州10カ国では、米国を同盟国と見る人々はわずか16%だった。
ここで問題となるのは米国の未来だ。中国は強靭な経済エコシステムを計画的に築き、今や重要鉱物の処理を支配し、バッテリーや電気自動車の大規模生産体制を確立し、輸出市場も多様化させ、制裁や関税に耐え得るようになっている。こうした中国に対し、米国が採れる対応策は、米国独自の経済エコシステムの構築だ。
米国には広範な同盟国・友好国ネットワークがあり、これらの国は世界の最先端技術、資本、熟練労働者、消費者の需要を支配している。理論上はこれらの国が結集すれば、重要物資は友好国から調達し、製造はパートナー国間で分担し、オープンで予測可能な市場を確保できる。
ところが現実には米国は同盟国を取引可能な顧客のように扱い、関税を武器に長年のコミットメントを脅迫に変え、他国にリスク回避を促してしまった。最も驚きなのは、米国がもはや世界のトレンドを決める国ではなくなり、世界が貿易や協力の拡大を探る中、米国は保護主義とナショナリズムの中に閉じこもろうとしていることだ。