Netflixが変えた日本の放送モデルーIP戦略は“体験”・インバウンドを視野に、WBCが示すメディア産業の構造転換

2026.03.26 Wedge ONLINE

 個社レベルで見れば、日テレは『名探偵コナン』やスタジオジブリ作品といった長寿IPを軸に、家族向けのインバウンド体験拠点としての発展可能性を持つ。一方、TBSはドラマ制作力や音楽・ライブ事業との連携を活かし、若年層を対象とした体験型IPの展開において優位性を発揮しうる。

 両社に共通する課題は、番組単位の発想から脱却し、IP単位でのポートフォリオ経営へと転換すること、製作委員会における主導権を確保すること、そして企画段階からグローバル市場を前提とした設計を行うことである。

分散IPネットワーク型モデル

 日本企業が今後グローバル競争において持続的な優位性を確立するためには、ディズニーのような単一企業による統合型モデルを単純に模倣するのではなく、日本の産業構造と強みを踏まえた「分散IP×世界観ネットワーク型モデル」へと進化することが求められる。このモデルは、複数の企業やクリエイターが関与しながらも、IPの世界観を中核に据え、それを横断的に連携・拡張していく点に特徴がある。

 その中核となるのが、IPポートフォリオ経営である。従来のように単発のヒット作品に依存するのではなく、複数のIPを戦略的に保有・育成し、それぞれのライフサイクルや収益構造を踏まえながら、長期的に価値を最大化していく必要がある。重要なのは、個別作品の成功ではなく、ポートフォリオ全体として安定的かつ持続的に価値を生み出す設計である。

 同時に、プラットフォーム依存からの脱却も不可欠となる。そのためには、直販モデルの構築と顧客データの確保が鍵を握る。配信プラットフォームに作品を供給するだけでなく、自社でファンコミュニティやEC、イベントなどの接点を持ち、視聴履歴や購買行動といったデータを蓄積・活用することで、IPの価値を継続的に拡張することが可能となる。

 さらに、企画段階からグローバル展開を前提とする発想への転換が求められる。国内で成功してから海外に展開するという従来の順序ではなく、多言語対応や文化的適応、SNS戦略を組み込んだ形で初期設計することが、国際市場における競争力を高める上で不可欠である。

 そして最終的には、ファン経済の構築が重要となる。IPは単なるコンテンツではなく、ファンとの継続的な関係性の中で価値を生み出す資産である。

 ライブイベント、体験型施設、コミュニティ運営などを通じて、ファンの参加と共創を促し、長期的なエンゲージメントを形成することが、分散型モデルにおける競争優位の源泉となる。日本企業はこのようなモデルを通じて、世界における新たなIP競争の形を提示しうるのである。