ホルムズ海峡封鎖だけではない!深刻化する湾岸諸国の石油・ガス施設攻撃、さらに高まるエネルギー供給不安

2026.03.31 Wedge ONLINE

 イランによるペルシャ湾岸地域での軍事行動による、日々大量の石油や液化天然ガス(LNG)が通過するホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥っている。国内外では、ホルムズ海峡をどのように通過するかといったことに注目が集まっている。

UAEの石油施設がイラン製ドローンにより炎と煙が上がっている(AP/アフロ)

 しかし、イランの報復攻撃は湾岸各国の石油・ガス施設にも及んでいる。攻撃の被害が拡大すれば、たとえホルムズ海峡の通航が再開されたとしても、湾岸諸国からの石油・天然ガス供給が中長期的に停滞することが懸念される。

イランによるエネルギー施設攻撃の傾向

 イランは米国・イスラエルから攻撃される度、報復として湾岸諸国に対するドローンやミサイル攻撃を強めている。

 標的となったのは、まず各国の石油製品を生産する製油所である。サウジアラビアでは東部のラアス・タヌーラ製油所と西部のサムレフ(SAMREF)製油所、クウェートではミーナー・アル・アフマディー製油所とミーナー・アブドッラー製油所、アラブ首長国連邦(UAE)ではルワイス製油所、バーレーンではシトラ製油所が攻撃対象となった。

 次にガス施設として、カタールのラアス・ラファーン工業都市にあるLNG生産施設や、UAE南部のシャー・ガス田およびハブシャーン・ガス施設も攻撃対象となった。さらに、イランはホルムズ海峡の外側、すなわちインド洋側に位置するUAEのフジャイラ港やオマーンのドゥクム港およびサラーラ港にある燃料タンクも攻撃した。

 こうしたイランによるエネルギー施設への攻撃には、一定の傾向がみられる。第一に、自国で攻撃を受けた施設と同種・同規模のエネルギー施設を標的にしている点である。

 実際、イランは3月7日、自国内でテヘラン製油所やシャフラーン石油貯蔵施設、シャヒード・ドウラティ石油貯蔵施設、シャフル・レイ石油貯蔵施設、アグダシエ石油貯蔵施設、カラジの石油貯蔵施設への攻撃を受けた。その後、イランは湾岸各国の製油所や貯蔵タンクへの報復を活発化させた。

 また3月18日には、イラン最大のガス田である「サウスパールス・ガス田」に関連する港湾都市アサルーイエの陸上ガス施設がイスラエルの攻撃を受けた。これを受け、イランはカタールやUAEのガス関連施設への攻撃を一段と強めた。 

 イランにとって、ガス生産量の低下は経済面で死活的な問題となる。天然ガスは、原油増産のための再圧入に用いられる重要な資源であるだけでなく、国内の主力電源であるガス火力発電の燃料でもある。さらに、トルコやイラクなどへの輸出を通じて外貨を稼ぐ重要な収入源でもあるためである。

 第二の攻撃傾向として、米国企業が関与するエネルギー施設も標的に含まれている点が挙げられる。イランがサウスパールス・ガス田への攻撃後に報復対象として名指しした施設を見ると、サウジアラビアのサムレフ製油所にはエクソンモービル社、ジュバイル石油化学施設にはダウ・ケミカル社、カタールのメサイード石油化学施設にはシェブロン社、ラアス・ラファーン製油所にはエクソンモービル社、UAEのシャー・ガス田にはオキシデンタル・ペトロリアム社と、いずれも米国企業が関与している。

カタールでのLNG生産の停止

 湾岸諸国のエネルギー施設への攻撃で、最も深刻な被害が生じたのはカタールのLNG生産施設である。3月2日、国営カタールエナジーは、ラアス・ラファーン工業都市およびメサイード工業都市の操業施設が軍事攻撃を受けたことを受け、LNGと関連製品の生産停止を発表した。カタール国防省によれば、イランから発射されたドローン2機のうち、1機はラアス・ラファーン工業都市内の発電所を、もう1機はメサイード工業都市内の発電所に給水する貯水タンクを標的としていた。

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