スタートアップ側からは「人材や資金の調達も有利な東京ではなく、大阪に拠点を置くメリットは少ない」との声が聞かれ、金融関係者からも「大阪で限られたスタートアップのパイの奪い合いになりかねない」と冷静な意見もある。
万博開幕から1年を前にした今年3月末、万博の〝負のレガシー〟を印象付ける問題も起きた。大阪メトロが、万博で来場者輸送に使用した「EVモーターズ・ジャパン」(北九州市)製の電気自動車バスについて、路線バスなどへの転用を断念することを発表。車体のトラブルが相次いだことから、メトロは「当社が求める安全性を確保することは困難と判断」と結論付けた。
バスは計190台で、路線バスや自動運転バスの実証実験に転用する想定だったが、閉幕後は大阪市内の駐車場にずらりととめ置かれていたことから、SNSでは「EVバスの墓場」と揶揄されていた。
メトロの100%株主である大阪市は3月、市議会での答弁で、大型と小型計150台の購入費は約75億円で、うち40億円超は国と大阪府、大阪市の補助金を充てたと説明。補助金約6億円を交付した国土交通省は一部返還を求める考えを示し、メトロは大阪市に対し、バスの購入に使った国などの補助金を返還する方針を伝えている。
「未来社会の実験場」を掲げた万博で注目された乗り物といえば空飛ぶクルマだが、こちらも実用化に向けた動きは鈍い。
開幕前、大阪府の吉村洋文知事は出演したイベントで「万博のときには空飛ぶクルマが大阪のベイエリアで、普通の人が自転車みたいに乗ってぐるぐる回っているのをやります」と豪語していた。
万博での商用運航を打ち出し、大阪市内に設置する数カ所のポートと万博会場を結ぶ二地点間運航を目指したが実現せず、技術認証や安全審査が遅れたことなどから一般の人を乗せないで万博会場の一角を飛ぶデモ飛行にとどまった。
ただ、大阪府と大阪市は30年代に観光などで活用する方針は変えておらず、5月8日に商用運航に向けたキックオフ会議が開催され、ようやく一歩が踏み出された。
開幕前から散々いわれていた万博レガシーの活用に向けて、地元ではさまざまな議論があるものの、いずれも具体性を欠いていることから地に足が付いていない。
特に深刻なのが夢洲の活用方針が定まっていないことだ。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)が30年秋の開業予定だが、それ以外は大半の計画が固まっていない。
万博会場の象徴だった1周約2キロメートルの大屋根リングについては「残す・残さない」の議論が万博開催中に展開され、閉幕直前の昨年9月に行政と経済界、日本国際博覧会協会で構成する検討会が北東部約200メートルを残すことを決め、10月に周辺に市営公園を整備するなどの「夢洲第2期区域マスタープランVer.2・0」を策定した。
このプランは今も改定が続いており、今年4月末には、万博レガシーを継承する記念館の建設計画などを追加する方針が決定。大屋根リング周辺を記念公園ゾーンとして整備するもので、リング外側近くに「EXPO2025記念館(仮称)」を置き、万博の記憶や最先端技術に関する情報を発信する。リングの初期改修や20年間程度を想定した維持管理などの財源は、万博運営費の黒字で生まれた剰余金を充てる。
プランに関する会議に出席した大阪府の吉村知事は「人が居住しない人工島だからこそできる圧倒的な非日常空間を目指すべきだ」「ナイトタイムエコノミー(夜間の経済活動)につなげるなど24時間眠らない島になるのもいい」と夢を描いた。