在日中国人女性の黄さんの子どもは私立小学校の2年生。教育熱心な黄さんは、希望通り、子どもを有名校に入学させることができて喜んでいたが、大変なのは毎日のお弁当作りだ。最近では私立でも給食を導入したり、お弁当を注文できる学校が増えており、保護者の負担は減っているが、黄さんは日本のSNSを参考にして、1年以上、子どものお弁当作りに励んできた。黄さんは「うちの子が日本人の子どものお弁当を見て恥ずかしく思わないように、がんばっています」と健気に語る。ときには完成後のキャラ弁の写真を撮り、中国のSNSに載せて自分自身を鼓舞している。
きれいなキャラ弁ができたときはちょっと自慢したい気持ちになるが、黄さんの投稿を見た中国の友人たちのリアクションは、黄さんの予想とは大きく異なるものだった。
「何これ?こんなお弁当のために毎朝5時に起きているの?」「黄さん、まるで日本人みたいになっちゃったね。上海だったら、こんなことは全部お手伝いさんにやらせるわ。でも、そもそも、お弁当を持っていく必要はないけどね」「日本の卵焼きを食べたことがあるけど、甘すぎて、あれは絶対にご飯に合わないと思う」といった冷たい反応が返ってきて、すっかり気持ちが萎えてしまったという。
中国の小中学校、高校の大多数は公立だが、近年では大都市を中心に私立校が増えてきている。私立のレベルも上がってきて、最近では公立より私立がいいという考え方に変わってきた。どちらの場合も、基本的に昼食は食堂(学食)に移動して食べることが一般的だ(一部の学校では業者によるお弁当が各教室に運ばれることがある。農村部などでは食堂が併設されていないため、いったん自宅に帰って食事をし、再び学校に戻る場合もある)。
地域や学校によって異なるので一概には言えないが、食堂で食べる場合、たいてい複数のおかずがビュッフェのように並べられており、それを自分で取ったり、厨房の係員に取ってもらったりする。2~3のおかずを選んだら、ご飯とスープを受け取り、テーブルに移動して食べる。日本の社員食堂とほとんど同じような形式だ。代金は専用のプリペイドカードで引き落としたりするが、学校によって異なる。
小学校から高校、そして大学まで、中国の学生の昼食はこのように食堂で食べることが多いため、そもそもお弁当を持参しなければならないというシチュエーションは少ない。校外活動はあるが、外で食べるため、日本の遠足のように、お弁当を持参する行事は存在しないし、サッカー教室、水泳教室などの習い事に行く際でも、子どもにお弁当を持たせるということがないのだ。
中国人がお弁当を持たない理由は、他にもある。お弁当は冷めてしまうという問題があることだ。彼らは基本的に、温かい食べ物を好む。冷たい食べ物は身体を冷やして健康に悪いという考え方が背景にあるからだ。近年は生野菜サラダを食べる中国人も増えてきたが、それは大都市の若者など一部の人に限られる。多くの中国人は出来立ての温かい中華料理を食べるのが普通だが、中華料理は油を多用するため、冷めると油が固まり、美味しくなくなってしまう。そのため、中華料理自体、お弁当という形態に合わない料理ジャンルだということもできる。