アメリカを猛追する中国製AI、安価と開放性で狙う「世界標準」の光と影

2026.08.21 Wedge ONLINE

 4月にMythosを公表した Anthropic のアモデイ最高経営責任者(CEO)は、「半年から 1年で中国が追いつく」可能性に言及していたが、実際には半年もしないうちに大きく近づいたことになる。世界はこの速度に注目している。

 第二に、中国製AIの基本は「開放性」だ。中国がそのフロンティアAIをオープンウェイトで公表するのはこの基本に関連する。Kimi K3が公開された翌7月17日、上海で開かれた「世界AI大会」における演説で習近平主席は、「オープンソース、開放性、協働、そして共有を促進すべき」と述べた。

 これは単に経済的合理性によるだけでなく、コストと多少のリスクがあっても、自国AIを普及させることで、中国製品を「世界標準」にすることを目指している。その先には「フィジカル AI」で世界一になること、AIを統合した人間型ロボットで世界的支配を確立する狙いがある。

 現在、米国政府は最先端モデルに対するアクセスを厳しく規制する方針をとっているが、これは中国が最先端のAIを構築できるのは結局のところ米国の技術を「盗む」ことができているからだとして、技術流出を断固遮断するとの考え方に立っている。他方、米国製モデルへのアクセスが禁じられている間に、中国製モデルが市場を席捲してしまえば、事実上、中国製モデルが世界標準となってしまう。

 従って、米国は「守り」の姿勢だけではなく、むしろ中国のように積極的にオープンウェイトで新型モデルを世界に広めるように、米国製を「世界標準」にすべきだとする声もある。7月24日、Dell、Google、IBM、NVIDIA等のテック企業が連名で、オープンウェイトこそがAIを経済的に持続可能なものにする鍵で、「閉鎖」モデルに依存するのは危険であるとする公開書簡を発表した。

中国もオープンウェイトへ懸念

 一方中国も、自国のフロンティアAIをオープンウェイトでリリースすることで、何らのリスクも負っていない訳ではない。AIの安全性を評価する米英の機関によれば、Kimi K3の性能は、「脆弱性利用コードの開発」や「シミュレーションされた企業ネットワークへの攻撃」において、最新型のフロンティア・モデルに対して「大幅に劣っている」との結果が出ている。

 Kimi K3をリリースすることで自国製品へのハッキング等に繋がらない保証はないのである。それでも中国がKimi K3をオープンウェイトでリリースしたのは、中国としては自国に跳ね返ってくるリスクを甘受しても、自国製品を世界標準にするとの戦略目標を優先して取り組んでいることを示している。

 ただし、報道によれば、Kimi-K3がリリースされる1カ月以上前、つまり米国でフロンティアAIに対する事前審査を求める大統領令が署名された頃(6月2日)から、すでに中国当局は主要テック企業と会合を開き、モデルの学習に用いる重要データの海外移転やモデルの「ウェイト(重み)」を海外ユーザーがダウンロードできるようにすることへの制限について協議したとされる。中国においても、これまでのオープンウェイトによる公表に変更が加えられる可能性が出てきている。

 

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