プーチンの北方領土訪問は日本への脅しか?パフォーマンスか?中国に合わせるロシア

2026.09.02 Wedge ONLINE

 だが日本にとって最も重要なのは、プーチンが政治・安全保障上の対日圧力を一層強めたことだ。8月 12 日、プーチンは太平洋艦隊の演習視察時に行った演説で、その大部分を対日政策に費やした。その要点は、次の通りだ。

 領土問題でロシアに妥協の余地はない。ロシアは日本の求めに応じ、平和条約締結に向けて対話を再開したが、後に日本が立場を変えた。責任は日本にある。日本はロシアに一方的制裁を科し、ロシアを「主要な脅威」の一つと位置付けた。よってロシアは太平洋艦隊を含む軍事力を強化する。欧州連合(EU) によるロシア船舶の拿捕に対抗し、ロシアは「あらゆる場所で」対抗措置をとる。ただロシアは日本を含む近隣諸国と協力の用意がある。

 要するにプーチンとしては、領土で譲歩する意志は全くないことを明らかにした上で、対日関係は「日本の責任」によって悪化し、かつ日本はロシアを「脅威」と位置付けているので、関係改善を望むのであれば日本が譲歩せよということだ。その「譲歩」とは、直接的には制裁の緩和だと思われる。

 令和8年度防衛白書において、ロシアは安全保障上の「強い懸念」とされ、「脅威」とはされていない。実際、わが国の防衛白書で、ロシア(ソ連)は冷戦時代の一時期に「潜在的脅威」とされた以外、一度も「脅威」と位置付けられたことはない。これは、ロシアが相手に譲歩を迫る際の典型的なやり方だ。

中国の対日政策と平仄を合わせる

 ロシアが何らかの譲歩を迫る時は、相手を非難し、強硬姿勢に出る。これはロシアによるウクライナへの対応に如実に表れている。これに対しこちらが譲歩の姿勢を示せば、ロシアは「弱さの表れ」と見て一層強硬策に出てくる。日本の対応はこのようなロシアの行動パターンを十分に踏まえたものでなければならない。

 プーチンによる対日圧力の強化は、中国の対日政策と平仄を合わせることも意識されているが、それは中露の軍事協力の深化という面にも色濃く反映されている。今回の太平洋艦隊の演習は、①7月初旬に黄海で実施された中露両国海軍の「海上連合」演習、②演習初日(7月6日)に行われた中国による初の潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM) 試射、③中露両国艦艇により行われた実任務としての共同海上パトロール、といった一連の動きとの関連で見る必要がある。

 7月6日の中国によるSLBM試射は、大陸間弾道‌ミサイル(ICBM)、戦略爆撃機と併せ、「核の三本柱」をすでに有していることを示した。以上の中露間の動きの延長に、8月のロシア太平洋艦隊の演習がある。

 

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