いまの「不満」は未来の成功へのパスポート

ユニクロの柳井正さん、ソフトバンクの孫正義さん、楽天の三木谷浩史さんは、私の想像ですが、「こうしたい・ああしたい」というベクトルをひたすら伸ばして、いまのように事業を大きく拡大させてきたのでしょう。

夢を遠ざける2つの言い訳

ところが、これが難しいのです。新入社員の頃の夢を追いかけて、本当にそうなった人というのは、極めて稀だと思います。それは、横軸の「できる・できない」ということばかりを考えてしまうからです。本当は、誰でもやりたいことがいっぱいあると思うのです。でも、いろいろな言い訳をしてしまうのです。

渋沢栄一の孫の孫に当たる渋澤健氏。「論語と算盤」経営塾を主宰し、渋沢栄一に関する講演活動・企業研修を全国で行っている。30代のビジネスパーソンと語り合うオンラインセミナー「渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え」(無料)を6月29日(月)19:00~20:30に開催予定(撮影:今井康一)

「海外に留学したい」

「でも、お金がない」

「独立して会社を立ち上げたい」

「でも、お金がない」

特に現実を直視する年齢になると、「お金がないから」と言い訳する傾向が強くなるような気がします。結果、できないので、やりたい仕事から最悪な仕事へとストンと落ちてしまいます。

なので、「できる・できない」の軸で考えるのではなく、「こうしたい・ああしたい」という発想を常に持つことが大事なのです。

前回の記事(渋沢栄一が「自分の未来に悩む30代」に贈る言葉)で紹介した渋沢栄一の言葉を覚えていますか? 「大丈夫の試金石」です。

自分からこうしたい、ああしたいと奮励さえすれば、大概はその意のごとくになるものである。

いままでは「こうしたい・ああしたい」と思っていることがたくさんあったとしても、おそらく、就職してから10年も過ぎれば、大半の人が会社組織の常識や同調圧力などによってそれは押しつぶされ、気が付くと「できる・できない」の横軸だけで、仕事を判断してしまいがちになります。

やりたい仕事ではなくても、働いていれば毎月、決まったお給料が入ってくる。飛び切りの贅沢はできないけれども、自分の趣味に時間もお金も割くことができる。「自分の人生、こんなもんだ」と納得できるのであれば、それでもいいと思います。

もちろん、「できる・できない」の横軸も大事なのです。でも、ここばかりを見ていると、あなたが持っているポテンシャルを発揮できないまま、人生が終わってしまうことにもなりかねません。それではあまりにももったいないと思いませんか。

現状に満足しない人の未来は明るい!

渋沢栄一は、『渋沢栄一訓言集』でこう言っています。

すべて世の中の事は、もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である。

昨今のように、先が見えにくい状況では、多くの人が安定を求めます。でも、現状に満足したら、誰も何の努力もしなくなります。何の努力もしなくなったら、人間としてどんどん衰えていきます。

人間の身体でいえば筋肉のようなものです。年をとると筋力はどんどん衰えていきます。筋肉の衰えを防ぐためには、とにかく運動が一番なわけですが、ともすれば運動するのが面倒といった理由から、多くの人は運動を怠りがちです。結果、筋力がどんどん衰えてしまいます。知力や気力も同じです。

渋沢栄一は、『青淵百話』でこう言っています。

老人になれば、若い者以上に物事を考え、楽隠居をして休養するなどということは、絶対にしてはいけません。逆に、死ぬまで活動をやめないという覚悟が必要なのです。

現状に満足していたら、晩年にこのような発言はありえないでしょう。渋沢栄一の頭のなかには、おそらく亡くなる直前まで「こうしたい・ああしたい」がいくつもあったのだと思います。

現状に満足できず不満だらけという人は、大いに見込みがあるのかもしれません。不満があるからこそ、それを何とか取り除こうとして、さまざまな手を尽くそうとするからです。不満を持つのは成功へのパスポートを持っているのと同じことなのです。