「Zoom」対抗馬が続々、ビデオ会議大競争の行方

米グーグルはビデオ会議サービス「Google Meet(グーグルミート)」で11の新機能を開発中。大半はすでに「Zoom」で展開されているものだ(画像:Google)

コロナ禍で外出制限が続く中、全世界で利用が急増したビデオ会議サービス「Zoom(ズーム)」。その勢いが数字で明らかになった。

運営会社であるアメリカのズーム・ビデオ・コミュニケーションズが6月2日に発表した2020年2~4月期決算で、売上高が前年同期比2.7倍の3億2816万ドル(約360億円)となった。

この4月には無料ユーザーも含めた1日当たりの会議参加者が3億人を突破。利用時間などに制限のない月額課金の有料ユーザーも増加し、従業員11人以上の課金企業数は前年同期の4.5倍となる26万5400社に達した。

「Zoom爆弾」現象でも高成長

一方で、部外者が会議に侵入する「ズーム爆弾」と呼ばれる現象が問題となり、いくつものセキュリティの不備が指摘された。ズームのエリック・ユアンCEOは2日の決算説明で、「過去に例を見ないほど利用が急増する中、大きなプレッシャーに直面した。ハイテク企業のコミュニティを頼り、多くの支援を受けた」と振り返った。

ズームは参加人数が多くても通信が安定する点で評価が高かったが、セキュリティの問題が噴出(画像:Zoom)

ズームはフェイスブックの元セキュリティ責任者を顧問として招き、4月から90日間のセキュリティ強化対策期間を設けた。ベンチャー企業を買収して暗号化機能を強化し、ユーザーがセキュリティやプライバシーの詳細設定をしやすくした新バージョンの提供を始めるなど、サービス改善を進めている。

ビデオ会議サービスに詳しいアメリカの調査会社ガートナーの池田武史アナリストは、「ズームは後発の専業メーカーとして、既存のツールの穴をうまく埋めた。使い勝手を評価する企業は多い。(セキュリティの問題はあったが)ズームの台頭が競合他社を刺激した」と指摘する。

4月以降、ズームを意識したとみられる機能を続々とリリースしているのがグーグルだ。同社のビデオ会議サービス「Google Meet(グーグルミート)」では、従来1画面に4人しか表示できなかったが、最大16人を表示できる「タイル表示」機能を始めた(ズームでは最大49人を表示可能)。

グーグルはさらに、11の新機能を開発中だと公表している。バーチャル背景やぼかし背景、ノイズ軽減、大規模な会議の小会議室への分割、挙手機能、アンケートやQ&Aの機能など、どれもズームがすでに展開している機能だ。

機能面でズームに追いつこうとする動きが鮮明になっているが、グーグルミートを含むオフィスソフト群「G Suite(Gスイート)」の事業を統括するグーグルのバイスプレジデント、ハビエル・ソルテロ氏は、東洋経済の取材に対して「(ビデオ会議の領域に)競合がひしめいているのは明白だ。ただ基本方針はユーザーに選択肢を提供すること。多くの人が信頼して使ってくれる製品を作っていくだけだ」と述べるにとどめた。

グーグルミートでは以前から会議の主催者に、ほかの参加者の承認や拒否、会議中のミュートや削除などの制御機能を提供している。また個人アカウントが主催した会議には、グーグルアカウントを持たない匿名ユーザーは参加できないようにしている。

「あなたが家に人を招待するとき、招待されていない人を招き入れることはないし、招待された人はドアをノックして、あなたは誰が来たかを確認して家に入れる。そうした社会の常識を考えて、ビデオ会議のサービスも設計されなければならない」。ソルテロ氏はそう指摘し、不審者の侵入を許したズームを牽制する。