「動くガンダム」がついに実現した大きな意味

12月19日から一般公開となった「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」の動く実物大ガンダム(撮影:今井康一)

実物大の「動くガンダム」がついに公開された。

このガンダム「RX-78F00」は、人気アニメ『機動戦士ガンダム』の40周年プロジェクトとして、横浜・山下ふ頭の「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」で建造が進められてきた。バンダイナムコホールディングス傘下にあって、アミューズメント施設の運営や玩具販売を手掛ける「Evolving G」が実物大のガンダムを動かすプロジェクトを担い、この施設を運営する。

Evolving Gの佐々木新代表は11月30日の発表会で「さまざまな分野のプロフェッショナル、日本の技術を結集して、『動くガンダム』が完成した。世界的なコロナ禍の中、ガンダムというエンターテインメントを通じて少しでも皆様を元気づけたい」と話した。

30周年で立ち、40周年で動いた

このガンダムは一度、新型コロナウイルス感染拡大の影響で建設中断を余儀なくされた。しかし、当初予定から2カ月遅れの2020年12月19日、一般公開にこぎつけた。公開期間は2022年3月末まで。入場は事前予約制で、2020年12月来場分のチケットはすでに完売するほどの人気の高さだ。

発進演出時の様子。腰の位置で固定されたガンダムが前方に動き出す(撮影:今井康一)

等身大のガンダムは高さ18メートル。この大きさはビル6階分の高さに相当する。重量は約25トン。全身の関節24カ所に駆動モーターを配置し、頭部や腕、足などを動かすことができる。外観はアニメに登場する初代のガンダム「RX-78」を踏襲しつつ、滑らかな動作を実現するために修正が加えられている。

実際に動く演出は1時間に2回行われ、報道向けに公開された演出では「ガンダム、起動」というナレーションの後、等身大ガンダムが前方に動きだした。全身を制御するモーターの駆動音とともに左右の足を踏み出す動作や、両腕を上げ下げしたり、首を動かしたりする演出も披露された。動くガンダムは発進と格納の2パターンがあり、迫力のある動きを楽しめる。

1979年に放映を開始した『機動戦士ガンダム』。実物大のガンダムが初めて“立った”のは、放送開始30周年の2009年だ。東京・台場の潮風公園に現れたガンダムの雄姿を見に、多くの人が訪れた。それから約10年、今回の「動くガンダム」のプロジェクトは、40周年記念事業として始まった。

企画の開始は2014年。ガンダムをアニメの中の設定と同じ大きさで再現して動かすべく、「ガンダム グローバル チャレンジ」(GGC)と名付けられたプロジェクトが立ち上がった。まずはアニメ『機動戦士ガンダム』原作者・富野由悠季氏を中心に、5人のリーダーが動くガンダムの理念を集約。そこから、実際に動かすために3人のディレクターが設計・制作を主導した。

「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」は横浜・山下ふ頭に建造された動くガンダムが展示されている施設。現地ではガンダムのプラモデルなども購入できる(撮影:今井康一)

2009年の「立つガンダム」プロジェクトでもメンバーを務め、今回のGGCディレクターとしてデザインや演出を担当した乃村工藝社の川原正毅氏は、「ガンダム立像が立った時、いずれガンダムを動かしてほしいと多くの人から言われた。その10年分の宿題を果たせたのではないかと思う」と語る。

実際に動くガンダムを作るという、これまで誰も成し遂げたことない巨大プロジェクトは当然1社だけで実現できるはずもなく、日本中の技術を結集する必要があった。