「部下のメンタル不調」を見抜く3つのサイン

④は、面倒見のよい上司にありがちです。相談に乗ったり仕事を減らしてあげたり、自分なりに親身になって一生懸命です。しかし、その方向性が独善的なため、往々にして意図しない方向に進みます。

このタイプの上司でよくあるのが、「俺がお前をよくしてやる」と部下を抱え込み、1対1の濃密な関係性を作り上げることです。その結果、部下の病状が秘匿され、関係部署との情報共有がなされません。

そのうえ、「会社に知られると、不利になる」「俺に任せとけ」などと気遣って他言することを禁じ、気がつけば、取り返しのつかないまでに悪化させます。

もちろん、適切に対応できている上司もいるでしょうが、メンタルヘルスケア対策が必ずしも十分でないわが国においては、①~④のいずれかになってしまうケースが多いのです。

では、①~④の態度の背景には何があるでしょうか。それは、病気に対する上司自身の無知です。無知は、医療の専門家ではないので仕方がありません。医務室と連携して、そこを埋める努力をしてくれれば問題はないのですが、それを怠ると、勝手な主観が必ず入ってきます。それが、軽視やゆがんだ親心を作り出します。行き着く先が、症状の悪化です。

あなたは、こういう上司になってはいけません。そのため、まず念頭に置くべきことは次の2点です。

①正しい知識を身につける
②組織的に動く

正しい知識とは、医学的に正確な情報です。組織的に動くとは、職場の資源を早い段階で利用し、連携を取るということです。まず、この2点を押さえてください。

会社のメンタルヘルス管理体制を知る

この2点を実行するために次に知っておくべきは、会社にどのようなメンタルヘルスの管理体制が敷かれているか、ということです。企業には、メンタルヘルスケアを行うにあたっての雛型があります。それは、法的な義務を基盤として、厚生労働省が作成したマニュアルにのっとっています。

具体的には、労働安全衛生法であり、その規定に基づいて策定された厚生労働省による「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針、2006年3月策定、2015年11月30日改正)が、それに当たります。労働安全衛生法の第69条では、メンタルヘルケアに関して次のように規定されています。

「事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない」

この法律にのっとって、企業は職員のメンタルヘルスケアのためのシステムを構築します。これを怠り、メンタルヘルス不全者を出してしまうと、損害賠償にもなりえるのです。

職場のメンタルヘルスケアは、まず事業者自らがその推進を表明することから始まります。企業は、事業場内に衛生委員会を設置し、労働者の健康障害の防止、健康の保持増進に関する検討を、次の5つの観点から行います。

①長時間労働による健康障害の防止を図るための対策の樹立 ②実施計画の策定 ③事業者が労働者の精神的健康の状況を把握することで不利益が生じないようにする対策 ④健康情報の保護 ⑤メンタルヘルス対策の労働者への周知

次に、4つの項目を骨子とする「心の健康づくり計画」を策定します。

①心の健康問題の特性
心の問題は評価が容易ではなく、個人差が大きく、プロセスの把握が困難
②労働者の個人情報の保護への配慮
健康情報を含む労働者の個人情報の保護と意志の尊重への配慮
③人事労務管理との関係
労働者の心の健康と密接に関係している職場配置、人事異動等の人事労務管理との連携
④家庭・個人生活等の職場以外の問題
職場以外の要因への配慮