ディズニー「38歳デジタル戦略部長」の重大使命

ディズニーは熱心に通うリピーターが多いことで知られる。彼らはパーク内にどんな施設があり、どう動けば効率的に楽しめるか熟知している。自ら情報発信するファンも多い。一方で、数年に一度訪れるようなゲストは最新情報に乏しい。そこで、スペシャルイベントを含め、アプリを開けばさまざまな情報を得られるようにしていくという。

実際、前述の「エントリー受付」を開始した際には、「こんなショーがあったのか」と施設の存在に初めて気づいたという声もあった。テーマパークではとかくアトラクションが注目されがちだが、劇場も、ショップもレストランもある。そのほか、隠れたスポットも多く存在する。多くのゲストが楽しめるように、積極的に情報を発信する狙いがある。

アトラクションはもちろんだが、ショップやレストラン、食べ歩きメニューなども存分に楽しむようになれば、オリエンタルランドが会社として重視する数値「ゲスト1人当たり売上高」の増加につながる可能性もある。リピーターの増加にも寄与するだろう。

現場のキャストの業務効率の改善も狙いのひとつ。ゲストの誘導や発券機などの案内がアプリで代用できるようになれば、困っているゲストに声をかける、楽しませるなど、本来のホスピタリティ業務に時間を充てられるからだ。

ハードだけでなくソフトも進化へ

コロナ禍でも、オリエンタルランドは成長投資を続ける方針を明らかにしている。緊急性の低い投資は見送るが、ディズニーシー大規模拡張プロジェクト(投資額2500億円、2023年度開業予定)や「トイ・ストーリー」がテーマの新ホテル(投資額315億円、2021年度開業予定)への投資は継続すると表明した。

デジタル戦略部もこうした拡張を視野に入れてサービスを開発する考えだ。木村部長は「リアルでのパークの体験をよくしていくことを念頭に、それが揺るがないようにやっていく。10年後、20年後もそこは変わらない」と語る。

2020年は長期の臨時休園を経験するなど、まさに未曾有の年だった。だが、「美女と野獣」エリアの開業など、ハード面でゲストを呼び込む準備はできている。いずれ来るコロナ後の本格復活に向け、デジタル戦略はソフト面を磨く重要ポイントと言えるだろう。