大坂なおみ氏も悩む「人前で話す恐怖症」の克服法

大坂なおみ選手もストレスを感じるという「パブリックスピーキング」。アメリカ人でも恐怖心を覚える人は少なくありませんが、対処法もあるといいます(写真:REX/アフロ)
日本を代表する一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチなどのプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。
たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。
その岡本氏が、全メソッドを初公開した『世界最高の話し方 1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』は発売後、たちまち12万部を突破するベストセラーになっている。
コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「大坂なおみさんを苦しめたある悩み」について解説する。

「会見拒否」が物議を醸した全仏オープン

全仏オープンでの「会見拒否」が問題化し、物議を醸していたテニスの大坂なおみ選手が、Twitter上で2018年のUSオープン以来、うつ病に苦しめられてきたことを告白し、大会を棄権することとなりました。

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そもそも、「アスリートはメディアの会見に応じるべきかどうか」については是非が分かれるところです。

記者の中には無神経で不勉強な質問をする記者もいますし、例えば、日本のメディアなどは、何かにつけ「日本の~」という文脈で記事を書こうと、彼女に対して、幼稚な質問も浴びせてきました。

現に、これまでも「抹茶アイスは食べたのか」「日本語でメッセージを」など、無茶ぶりされていたわけです。

彼女にしてみれば、黒人というアイデンティティは強固に持ちつつも、日本人としての感覚も薄いはず。人種差別に対する意識は低い一方で、「俺たちの大坂なおみ」という日本人の感覚にも戸惑いを覚えていた部分もあったでしょう。

アスリートには「スポークスパーソン」を期待する声も

「著名人とメディアの関係」ということでは、時に「政治家の取材拒否」が話題になります。

例えば、トランプ前大統領は、自分の言いたいことをフィルターなしに伝えられるTwitterという拡声器を用いてのコミュニケーションを重視していたため、好意的ではないメディアへの対応を拒否したこともありました。

その一方で、都合のいい場面ではメディアを利用してきたわけですが、伝えるチャンネルが多層化するにつれ、こうした「メディアパッシング(メディアをスルーする)」の動きは増えてくることでしょう。

いわゆる「公人としての政治家のメディア対応は、国民に対する説明義務である」というある程度のコンセンサスがある一方で、「アスリート」はどうでしょうか。

公人とはいえないが、ファンに支えられている存在であることや、トーナメントは商業機会でもあり、主催者やスポンサーがスター選手に「スポークスパーソン」としての役割を期待するのはやむをえないという意見もあります。

実際、羽生結弦選手などはそのメディア対応の素晴らしさなどが話題になりますが、「それも含めてアスリートの本分」「メディア対応もファンやスポンサー、大会主催者への義務の1つ」という考え方です。

錦織圭選手やシャラポワ選手などが通った、アスリートのためのエリート校、フロリダの「IMGアカデミー」では、そういった観点から人前で話す「パブリックスピーキング」の訓練なども徹底的に受けさせられます