発達障害でも「仕事ができる人・できない人」の差

「発達障害でも仕事ができる人」は何をしているのか? (写真はイメージです。Satoshi-K/iStock)
「やることが多いとパニックに陥る」「つい頑張りすぎて疲弊してしまう」「わからないことがあっても聞けずにあとで怒られる」……そんな“要領の悪さ”を、自分の力でどうにか解決しようと思っていませんか?
要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑』共著者のF太(えふた)さんと小鳥遊(たかなし)さん、『発達障害サバイバルガイド』著者の借金玉さんによると、要領よく生きるコツは、他人の力を借りること! 発達障害や要領の悪さに悩んできた3人が実践している処世術を語ってもらいました。

借金玉:自己啓発系の本やネットにはたいてい「あれをしろ」「これをしろ」と書いてありますが、僕のように発達障害をもつ人にとっては「何を生活から減らせるか」が重要だと感じます。やることが山積みなのに、「PCのモニターを買い替えなきゃ」「窓も拭かなきゃ」といろんなことが気になり始める。それをどう無視するか。

小鳥遊:無視するスキルですね。私は「現実」のほかに「仮想現実」を作ります。やらなきゃいけないことを本質的になくすのは無理だけど、いまやるタスクを決めたら、仮想現実の中ではシングルタスクだけに没頭する。

借金玉:「シングルタスク」=「タスクに優先順位をつけること」と考えたとき、僕はけっこう人を見て優先順位を決めていますね。編集さんが「そろそろ原稿を……」と怒り始めたときとか(笑)。

小鳥遊:知り合いの社長は、メールはとりあえず放置して、怒られた順に片づけると言っていました(笑)。相手の怒りは「そろそろやらないとやばいですよ」と教えてくれているとも捉えられる気がします。

「仕事はパスまわしで進めるもの」

F太:小鳥遊さんは逆にメールの返信がすごく早いですよね。「自分の手元に仕事をためない」「できるだけすぐに打ち返す」ことを徹底していると言っていましたが、そのスキルはどうやって身につけたんですか?

小鳥遊:私は会社員なので、「仕事はパスまわしで進めるもの」という環境にそもそも身を置いていることが大きいと思います。自分にパスが来たら必ず誰かに仕事のボールを渡すのが仕事。自分のタスクは全部手順を書き出すようにしているのですが、一旦ボールを手放したら、あとで返ってくるとしても手放したことを書いて可視化する。そうすると気が楽になります。たくさん仕事を抱えているように思えるときも、手放していないボール(仕事)のことだけを考えればいいわけですから。

F太:借金玉さんの本を読んで「なるほど」と思ったのは、自分の中でタスクが滞留したときは人に話を聞いてもらいながら整理する、という話。その人の頼り方、すごいなと思いました。

借金玉:他人の恋愛相談って、「脈ないな」と思ったら7割くらいは当たるじゃないですか。不思議なもので、人間は他人のことだとわかるんですよね。ADHD同士で話を聞いてもらい合っても成立するし、なんなら優先順位まで決めてあげられる。

F太:いまは会議も打ち合わせもオンラインが中心だから、雑談が減ってしまっていますが、「僕の思考の整理に付き合ってくれ」は雑談のネタにもなっていいですね。自分の会社でもやってみようと思います。

勉強法は「丸パクリ」したほうがいい

小鳥遊:私も発達障害と診断されているんですが、発達障害をもつ人の中にも、社会で活躍できる人とできない人がいます。何が違うと思いますか?

借金玉:ひとつのことを継続的にやる人と、やらない人。できるまでに人の10倍かかったとしても、「10倍やればできる」ということなので、数カ月スパンだと追いつけなくても、年単位で見れば追い抜ける可能性がある。僕は文章を書くことくらいしか継続できていませんが、続けた蓄積が結果につながっています。