「彼は運がいいだけ」と笑う人が成功できない理由

セレンディピティは大事ですが、それがインパクトを生むのは、人生でも、会社でも、その序盤のことではないかと思います。

それによって動き出したあとの人生の成功、会社としての成功は、セレンディピティはもちろん、努力によるところが大きいと思います。

「努力を続けていれば、きっとうまくいく」というポジティブな視点や、オープンマインドでいる人のもとには、いろんなご縁が集まります。それが、結果として成功へとつながるのです。

ポジティブな視点やオープンマインドを形作るのが大事だからこそ、最初に、自分の向かう北極星を定めることが大切です。

私自身、そうして得たチャンスが、ミドリムシや、メンターとの出会いでした。

日本人なら、誰もが小学校の理科の授業でミドリムシについて習います。ですが、それを素材にして会社を立ち上げたのは私だけです。

18歳の夏、バングラデシュで、大勢の栄養失調の子どもの姿を目にして、頭のなかにあった点と点が、電撃的に結びついていくというセレンディピティが起きたのです。

そうして、点と点が結びついてスタートしても、ほとんどの人は、途中であきらめてしまいます。でも、やり抜く人もいる。セレンディピティによってスタートしたあと、その先にある偉大なゴールにたどり着けるかどうかは、その人の努力次第なのです。

本書の帯の裏側にも、「運と努力を正しく相互作用させる最強メソッド」と書かれています。これを忘れてはいけません。このことは、経営者だけでなく、誰の人生でも同じだと思います。

心理的安全性とセレンディピティ

本書では、新しい仲間に対してどう向き合えばいいのか、会社組織としてどうセレンディピティを高めていくのかをまとめた章もあります。これは非常に新鮮でしたし、科学的でした。

組織のセレンディピティを高めるために重要なことは、なによりも心理的安全性を高めることだとされています。そのために、アンコンシャスバイアス(無意識の意識の偏り)をできるだけ取り除く必要があり、本書では、リーダーは積極的に自らの弱みを話すことだと書かれています。

実は、これも弊社では、感覚的には行われていることでした。弊社の代表執行役員CEOは、重要な会議のときも、いつもTシャツとデニムのようなラフな格好なんです。弊社の仲間は「ああ、これが許されるなら、何を言っても怒られないかも」と感じ、心理的安全性が高まります(笑)。

そういう私も、いつも同じ派手な緑色のネクタイを締めています。北極星を目指してさえいれば、なにをやってもいいのです。

一方で既存の日本の組織は、この30年間、組織のセレンディピティを下げることしかやっていないのではないでしょうか。自由に発言したり、行動することは許されているでしょうか? まずはそのことを自問する必要があるでしょう。

本書には、読者のセレンディピティ・スコアを計算することができる38の質問が用意されていますよね。日頃、「イノベーションとセレンディピティが大事だ」と語っている大企業のリーダーの方は、ぜひご自身のスコアを計算することをお勧めします。実は予想よりすごく低いということがあるかもしれません。

日本はオープンマインドではありませんし、リーダーが弱みをさらけ出すことなどもありません。大学でも、ミドリムシについて本当に詳しくよく知っている先生はなかなかいません。前提として、「大学教授なのだから知っているはずだ」となるし、大学教授が自ら「実はそれほど知らないので教えてください」などと、「弱みを見せて」切り出すことが難しいのです。

誰もが「初心者」としてスタートラインに

日本人は、「絶対に失敗しない」ということに執着しすぎて、セレンディピティを高めることに最も失敗した国だと私は思っています。