若手が上司に「助言」受け入れられない組織の末路

企業が現場を「末端」か「先端」か、どちらで捉えているかによって変わるものがあります(写真:kou/PIXTA)
日本の組織は「内向きで上から目線」になりがちだと指摘するデロイト トーマツ グループ執行役の松江英夫氏。これから日本が成長していくためには、「外向きかつ下から目線」に変えていく必要があると言います。そのための手法として、リバース・メンタリングの重要性を説きます。
※本稿は、松江英夫『「脱・自前」の日本成長戦略』の一部を抜粋し再編集したものです。

日本の多くの組織において、「現場が大事」という考え方は根強く浸透しています。

これは最も顧客に近いところで価値を生み出してゆく視点に立てば優れた考え方です。一方で、不正が起きた企業や組織においては、現場に任せすぎた故に、情報が上に届かずに、不祥事を長年放置してしまったなどのケースでも「現場」は話題に上がります。

「現場重視」という考えは共通するものの、”現場起点”で良い効果をもたらす場合と、現場の失敗を制御できずに組織的な不正に発展してしまうケースに分かれ、結果に差が生じてしまう原因はどこにあるのでしょうか。

それは、現場と経営との間が「断絶」してしまうことが原因です。現場においては成功も失敗もいつでも起こりうる中で、それが上位層や経営にタイムリーに伝わるか否かで組織の対応力、経営力に差が生まれてきます。

ではなぜ、現場と経営に「断絶」が生じてしまうのでしょうか。

「現場」は末端ではなく「先端」

私は、根本的な理由として、経営の「現場」に対する価値観、捉え方の違いにあると見ています。

そこでのキーワードは、現場を末端ではなく「先端」と捉えることです。「現場」を「先端」と見るか”末端”と見るか、それによって組織の動かし方は真逆になります。

まず、現場を”末端”と見ると、経営は、”内向きかつ上から目線”になります。企業で言えば、「経営→管理→フロント→顧客」であり、行政組織で言えば、「国→都道府県→市町村→住民」の階層があり、組織は自ずと内向きな論理が働くものです。組織を動かすリーダーにとって、日常の接点からすると「現場」は最も遠い存在、いつしか”末端”になってしまうものです。

一方で、現場を「先端」と見ると、”外向きかつ下から目線”になります。現場は、組織にとっては、顧客や住民をはじめ外部と最も早く触れ合う接点です。現場で起こっている問題は、複雑で一筋縄にはいかないものばかりです。組織のリーダーにとっては、より困難で大変なことではありますが、本当の解決策は現場でしか見つからないものであることも事実です。

これからは、多くの「日本的な組織」にとって、「現場こそ”先端”」という意識のもとで顧客や住民目線を第一にして変革に臨むことが求められます。実は「内向きなタコツボ社会」を変えるきっかけは、現場を「先端」とみることから始めるところにあるのです。

下から学ぶ”リバース・メンタリング”

現場を「先端」とみることで、”外向きかつ下から目線”で組織を変革してゆくことの重要性を述べました。ここでは、最近多くの組織において”現場発”で取り入れられている「下から目線で学ぶ」手法であるリバース・メンタリングについて、組織変革における有効性を見てゆきます。

リバース・メンタリングは、若手などが上位者や年長者にアドバイスを行う手法として注目されていますが、現場起点で組織を変革する際の推進力として期待できます。階層的組織や縦割りが強い「日本的な組織」の風土を変える上で、若い世代の力を活用して、世代間の意識ギャップを埋めることは、変革のきっかけになります。