仕事の質は「どう」ではなく「誰」とやるかで決まる

ブルズの快進撃は続く。NBAファイナルで、強敵ロサンゼルス・レイカーズを破った。ジョーダンは、2度目のMVPを獲得、初のチャンピオンシップを手にした。

ブルズはこの後7年間でさらに5回優勝を重ねた。ジョーダンの才能に導かれ、チームベースの陣形であるトライアングル・オフェンスに磨きをかけた成果だった。

1991年から1998年の間に6回優勝したシカゴ・ブルズは、スポーツ史における最強王者の1つとなった。そして、マイケル・ジョーダンは史上最強のバスケットボールプレーヤーと呼ばれるようになった。

しかし、ジョーダンがすべて自分1人でやろうとしていたら、どちらも実現しなかっただろう。バスケットボール界のレジェンドとして頭角を現すこともなかっただろう。

個人プレーヤーからチームプレーヤーに転身し、チームの中で自らを鍛え、すばらしい監督に率いられたからこそ、真の輝きを手に入れることができたのだ。

ジョーダンが長期にわたり好調を維持できた理由

実はあまり知られていないことだが、ジョーダンは、人間生理学とパフォーマンスのプロフェッショナル、ティム・グローバーをプライベートコーチとして雇っていた。自分の限界を超え、弱点を克服することが目的だ。最高のコーチングとコンディショニングを受けるために、莫大な投資をしていたのだ。これが、ジョーダンがプレーヤーとして長期にわたり好調を維持できた大きな理由である。

このエピソードには、高いレベルの成果や成功を目指す人に役立つ情報がたくさんちりばめられている。中でも最も大切な教訓は、ジョーダンが自己完結するタイプの人間ではなかったということだ。彼の「可能性」は、持って生まれた不変のものではなく、状況に応じて変化し、まわりとの関係性により磨かれたものだった。

ジョーダンは、チームや監督、そして経験を通して変化し、可能性の幅を広げた。1人の人間として、才能あるスポーツ選手として、自分だけで取り組むよりも、大きく成長できたのだ。

マイケル・ジョーダンは、おそらく地球上で最も強く、最もやる気にあふれたアスリートだ。その彼が、目標を達成し、超えるために、「どうやるか」ではなく「誰とやるか」を具体的には初期にはピッペンを、後にグローバーやジャクソンを必要としたとして、あなたや私にも同じことが言えるだろうか? 考え方を「どうやるか」から「誰とやるか」にシフトすると、私たちに何が起こるのだろうか? 「誰か」があなたの能力や可能性を広げてくれるとして、いったい何ができるようになるのだろうか? 自分の人生について、自分1人で背負おうとしていることが、どれくらいあるだろうか?

では逆に、こう考えてみよう。マイケル・ジョーダンでさえ、自分だけではチャンピオンシップにたどり着くことも、ましてや優勝することもできなかったとすれば、どうしてあなたが自分の目標を自力で目指そうなどと思えるのだろうか?

確かに、マイケル・ジョーダンが達成しようとしていたことは、極めて大きなことだった。NBAで6度も優勝することはおろか、1度優勝するだけでもかなり難しいことだ。

これが、次の質問につながるポイントだ。

「あなた」は何を達成しようとしているのか? あなたには、1人でできることの限界を超えるために必要な、視点やリソース、能力を与えてくれる「誰か」がいるだろうか?

自分1人で達成しやすいように、目標をあえて低く抑えていないだろうか? 自分の能力を証明しようと思ったら、何もかも背負い込み、身を削る必要があると、思い込んではいないだろうか?

自分の弱みを自覚し、チームを信頼すること

何もかも自分でコントロールしたいと思う優秀な人が、「どうやるか」に集中するのは簡単なことだ。「どうやるか」は自分自分をコントロールすることだからだ。しかし、取り組みを広げ、勝てるチームをつくりたいのであれば、自分の弱みを自覚し、チームを信頼することが必要になる。そして、