テレビ離れのZ世代も見ている「テレビCM」って?

そのため、1つの作品をじっくり見ることよりも多くネタを手に入れることを優先し、倍速などでの動画視聴は必須になる。さらには視聴する動画が面白くなかった場合に備え、映画を観る際にはどんなエンディングとなるのかを把握してから視聴したり、ミステリーものなら犯人を知っておいてから視聴するといった「ネタバレをチェックしてから」といった行動をとる人もいる。

ここまでくるともはやZ世代にとってはメディアを楽しむものではなく、情報を得るためのコンテンツとして「消費する」ものとしての感覚に近いのではないだろうか。Z世代はデジタルネイティブな世代ともいわれ、普段から大量の情報に触れ、その中から欲しい情報を効率的に入手することが当たり前の環境を生きている。「タイパ」を重視するZ世代には、他世代と異なるニーズがあり、行動がまったく違ってくることを意識しなければならない。

Z世代にテレビCMを見てもらうには?

テレビをながら見、ながら聞きしてしまうZ世代では、テレビCMはなおさら見られないのではないか。テレビCMを意識してもらうにはどうすればいいのだろうか。

1つの方法としては単純であるが、Z世代に好まれる楽曲や馴染みのある替え歌、声優など特徴的な声の人物を出演させることで“BGM化”しているテレビにインパクトを持たせ、イヤーキャッチでスマホからテレビ画面に目を上げてもらうことが必要だ。

例えば、童謡「クラリネットをこわしちゃった」の替え歌をCMに使った例や、キャンディーズの「年下の男の子」の替え歌をCMに使った例ではZ世代におけるCM認知率が高く得られている。どこかで聞いたことがある曲が、変わった形でテレビに流れることはZ世代の興味を引くことにつながる。

もう1つの方法は、SNSやまとめサイト等と連携していくことにある。Z世代に対し、テレビCMコンテンツの認知経路を調査したところ、テレビ自体の情報だけでなく、SNSやまとめサイトで見たことがきっかけで意識され、実際にテレビで流れたときにCMコンテンツを見たと回答する割合が多くあった。

デジタルネイティブでありタイパを重視するZ世代は、テレビCMに1次接触するよりも、使い慣れたデジタルツールを使い、誰かがまとめてくれた情報に2次接触として初めて情報に触れるケースも多いため、デジタルにおいてテレビCMコンテンツと連携した施策が有効だ。

テレビCMに誘導する「下準備」が必要

ただし、その際に単にテレビCMと同じコンテンツを置いておくだけではもったいない。15秒や30秒で尺の決まっているテレビCMと異なり、デジタルコンテンツはある程度自由を利かせることができる。

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例えばコンテンツの冒頭をオリジナル楽曲とダンスで演出し、途中に特徴的なキャッチコピーをシンプルに見せることによってZ世代の関心を誘ったコンテンツは、弊社の広告効果測定の調査結果からZ世代において購入意向を大きく高めていたことが示されていた。

テレビを見ないとされるZ世代に対し、テレビCMによりアプローチするのを諦めてはいけない。インパクトのあるシーンやフレーズで興味を掻き立て、ユニークさや遊びを持たせることでSNS上でバズることに成功すれば、自然とZ世代の中でも話題となる。そして、そこまで下準備を整えることができれば、実際にテレビCMが流れたときにZ世代からも注視され、テレビCMとしての役割を果たせるだろう。