会社員生活、15年延び75歳までに?50~60代でも新スキル習得は必須

60代でも新たなスキルを身につけられる

 高齢者になる前に今から備えておきたいことの2つめは、たとえば現在引き合いが強いデータ分析やマーケティングなど、今後の企業社会で通用するスキルを持っていない場合、それを新たに身につけて、絶えず更新していくということです。

 スキルを身につけたり磨いたりするトレーニングは、何も若い世代だけではなく、40代でも50代でも60代でも求められるようになっていきます。いくつになっても学びは大切だという意識を持って、自らの興味や好奇心の幅を広げていくことが、納得できる人生の重要な手がかりになると思っています。

 ホワイトカラーのシニア人材における雇用では、事務処理などの平易な仕事に従事しているケースが多いという現状がありますが、そもそもそういった仕事は将来的にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる自動化ソフトやAIによって代替されていくので、大半はなくなってしまうという事態を想定しておく必要があります。

 結局のところ、自分がシニアになってから仕事を奪われないようにするためには、新しいスキルを身につけることや自らのスキルを磨き続けることが、どうしても欠かせないというわけです。

 そうはいっても、たとえホワイトカラーの仕事であっても、豊富な現場の知識とノウハウがあり、それを若手にわかりやすく教えることができるベテラン社員は、高齢者世代になっても会社にとっては貴重な人材になるはずです。

 わかりやすく教えるというのはひとつの立派なスキルなので、それが身についている人は、定年後に同じ会社で再雇用になっても、違う会社に転職することになっても、首尾よくやっていけるでしょう。

 いずれにしても、日本の経済・社会は少子高齢化を乗り越えるために、定年延長・通年採用・中途採用を標準化させていきますので、そういった未来では自らのスキルを高めることが何よりも重要になります。

 新たなスキルを身につけるには50代や60代では遅いのではないかという意見があるかもしれませんが、新たにスキルを身につける時間は十分にあるという環境が整いつつあります。50代でも60代でも、決して遅いということはないのです。

 経済のデジタル化が進む以前の世界であれば、ひとつのスキルを身につけるのに10年ないし20年の時間を要するとされてきました。しかし、今では何をすればどんなスキルが身につくのか、何をすれば短い期間で修得できるのか、デジタルの世界がITやAIを駆使して教えてくれるのです。

 本人にやるぞという心意気があれば、現役世代に劣るということは決してありません。これまでの仕事に対する価値観をガラッと変えて、やりがいを持って仕事をすることができれば、実りある人生を送ることができるはずです。

(文=中原圭介/経営コンサルタント、経済アナリスト)