広がる“コロナ貧困”…車椅子で路上生活、普通に働いていた人が家賃払えず、貯金尽きる

「おそらく喘息なのではないかと思います。無料低額診療所を紹介しました」

 筆者がこの場で話を聞いたのは来場者のなかのほんの一部にすぎないが、困窮する人たちの背景は千差万別だった。コロナ禍は確実に、困窮者の領域を広げてしまったようだ。

自助も共助も限界にきている

 大人食堂の主催団体のひとつ、一般社団法人「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛さんによると、大人食堂は1年前に続き、2回目だという。

 普段は日払いなどの仕事をしながらネットカフェに寝泊まりをしている若者たちが、年末年始になると長期間仕事が休みになるために所持金が尽き、路上に弾き出されてしまうという現象が起きていた。炊き出しの場は中高年の男性ばかりで、若者や女性は、「行きづらい」という話も聞いた。

 そこで、食事を介して敷居の低い相談窓口をつくろうと開催したのが、「年越し大人食堂」だった。1年前には数十人規模だったのが、今回はコロナ禍の影響もあり、元日は来場者270人、相談件数45件、3日には来場者318人、相談件数72件と、想定以上の人数が集まった。老若男女さまざまな人たちがやってきて、家族連れや外国人も少なくなかった。外国籍の場合、在留資格の関係で就労を許されず、生活保護などの公的援助も受けられないという八方塞がりで、かなり困窮しているケースが多かったという。

「路上生活やネットカフェ生活をしていた人だけではなく、コロナ以前には普通に働いて普通に生活をしていて、『まさか自分がそんな状況になるとは思っていなかった』という人が困窮しているという実態が、今回の大人食堂で改めて明らかになりました。社会の底が抜けてきているという感覚です」と、稲葉さんは語る。

「つくろい東京ファンド」という名前には、「市民の力で、セーフティネットのほころびを修繕しよう」という意味が込められているそうだ。

「菅総理は“自助・共助・公助”という政策理念を掲げているけれども、今はもう自助も共助も限界にきています。まさに公的責任において貧困対策を実施することが求められていると感じています」

 7日にはついに、緊急事態宣言が再発令された。仕事を失い、困窮する人たちはますます増えていくのではないだろうか。

(文=林美保子/フリーライター)