ダイソーと真逆、セリアが頑なに「100円均一」を続けられる秘密…多くの固定客獲得

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セリアの店舗

 2020年11月、100円ショップ業界大手セリアの河合映治社長が、決算説明会で「当社は100円を堅持する」と発表して大きな話題を呼んだ。100円ショップらしく100円均一を続けるという決意表明だが、その背景には昨今の100円ショップ業界が歩んでいる“傾向”が関係している。

 それは、業界トップの店舗展開数を誇るダイソーを筆頭に、ワッツやキャンドゥといった競合の100円ショップがこぞって200~500円という価格帯の商品を数多く打ち出すようになってきていることだ。以前から200円以上の商品は登場していたが、近年はそれが特に顕著になってきているのである。

 100円という安価な価格帯の商品をウリにしていた業界に一体何が起こっているのか。また、こうした変革期に抗い続けるセリアにはどのような戦略があるのか。今回はそんな疑問を、消費経済ジャーナリストの松崎のり子氏にぶつけてみた。

デフレの波にうまく乗り多店舗展開でシェア拡大

 まずは、なぜ100円ショップ業界がここまでの成長を実現したかについて聞いた。

「この100円ショップという業態が日本で人気を博したのは、ダイソーの直営店がオープンした1990年代初頭からです。バブル経済が弾け、給料の右肩上がりが止まったデフレの真っただなかにおいて、多くの一般家庭の意識が節約志向へ向き始めていた時期ですね。100円ショップ業界はこうした潮流を見事に見抜いて一躍成長をみせたということです」(松崎氏)

 そんな100円ショップ業界だが、どうして安価な価格設定を実現できたのだろう。

「安価で均一価格というのは“衝動買い”を誘うんです。まあ100円だし買ってもいいか、と思って商品を買った人も少なくないでしょう。100円ショップに行って、商品を1個だけ買うという場面は意外と少ないものですよね。こうして“買い物のハードル”を下げておいて、利益率の高い商品と低い商品を混ぜていく。100円で売ると赤字になる商品があっても、他の利益率の高い商品を買ってもらえれば、トータルでみれば黒字になるわけです。

 この“利益を広範囲の視野で捉える”という考え方は、多店舗展開によってスケールメリットを生かし、商品を大量に生産することで原価を下げるという経営戦略にも通じるところがあります。

 100円ショップという業態自体がもはやブランド化しており充分な固定客がついている、というのも大きいでしょう。また“どの商品が売れて、どれが売れていないのか”というマーケティングには相当注力しており、商品の入れ替えを早くしているので、その固定客たちが定期的に足を運ぶ仕組みもできています。そうした“血流”の良さも、安価な商品を安定して提供できる秘訣といえるでしょう」(同)

値上げを続ける業界、ひとり逆流するセリアの覚悟

 では、昨今の高価格帯商品の興隆にはどういう理由が隠されているのだろう。

「100円ショップ業界の多くが、商品の製造をコストが安価な海外企業に委託しています。けれど高価格帯商品が出始めた当時は円安が進んでいたため、コストの負担が増加して、半ば致し方ないかたちでこうした商品を展開するに至ったのだと思います。生産コスト以外にも、人件費や物流費が高騰したのも高価格帯へのシフトを後押ししていますね。

 また、100円ショップで買える物のなかには、ディスカウントストアやドラッグストアで扱っている商品も多く、競合するお店が増えてきてしまっているのも問題点。これら総合的な理由から、ダイソーなどは100円だけで売って利益を出すのは厳しいという結論に至ったのでしょう」(同)

 松崎氏いわく、最近の高価格帯へのシフトは数年前に予兆があったという。