世田谷区で破格の4千万円台、“細長すぎる”一軒家…意外なメリットと人気の理由?

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※イメージ画像です(「Getty Images」より)

 2015年に東京都世田谷区に建てられた「コニファーコート成城学園前Ⅱ」という一軒家が話題となった。その最大の特徴は、間口が2m程度で奥行きが30m以上という異様に“細長すぎる”家だったことだ。

 この物件は東京の高級住宅街である成城学園前駅(小田急線)が最寄り駅で、建物面積19.04坪の2LDKだが、一時期、このエリアの一軒家としては破格の4690万円で売り出されていたことから話題を呼んでいたのだ。

 この物件以外にも“細長すぎる家”の存在は、SNSなどでたびたび取り沙汰される。最近では埼玉県所沢市にある駅近の物件が狭い間口と奥行きの長さに加え、線路の真横に建てられていることから注目され、イギリス・ロンドン西部にある診療所と美容院に挟まれた細い家も大きな話題となった。

 お世辞にも住みやすそうには思えない家だが、果たしてどういった理由で建築・販売されているのだろうか。住宅評論家としてテレビ番組などに出演されている櫻井幸雄氏に、日本で細長すぎる家々が生まれる背景について伺った。

さまざまな事情が絡んで建築される細長すぎる家

 住み心地に優れているわけではない細長い土地に家が建設される理由には、道路や線路の工事が関係しているのだとか。

「細長い家が建てられる土地は、新しい道路ができたことで使われなくなった通路や、道路や線路の拡張で売却した土地の余りであることが多いです。前者は建築基準法の接道義務を満たすために延長した『敷地延長(シキエン)』と呼ばれる部分や、道路に接していない土地(袋地)の通路として周りの土地(囲繞地)が用意した通路が例として挙げられますね。

 新しい道路がつくられるにあたっては、行政に頼まれて土地の一部を削って売ることがあります。その際、行政が買わなかった土地が残ってしまうというケースが往々にしてあるんです。2つのケースでは不要な通路を利用して家を建てたり、、余った土地に家を建てて、分譲し、お金を得るといったことが行われます。

 駅に近く歴史のある住宅地は狭い道に面した家が多く、今の基準に合わせた道路の拡張工事がたびたび起こるため、そういった変形地が生まれやすいですね。世田谷区や所沢市の住宅も、その一例だと思いますよ」(櫻井氏)

 では、家を建築して販売する側にはメリットはあるのだろうか。

「工務店や不動産業者のなかには、細長い土地や三角形の土地といった、家を建てるのが難しいとされる土地を得意とする会社があります。土地を活用できずに持て余している人に向けた商売として、そういった会社による家が日本のあちこちで建てられているんですよ。

 また、狭い土地に家を建てることは、雑誌などで取り上げられやすいという特徴もあります。若い建築士にとっては、そういった土地で普通に暮らせるような家を建てることは、自分の実力と名前を知らしめる絶好のチャンスでもあるわけです」(櫻井氏)

狭い・小さい家が買われる理由は土地代にあり

 そういった狭い土地に建てられた家を購入するにあたっての最大の利点は、価格の安さにあると櫻井氏は語る。

「不動産は『こんな場所の家を誰が買うんだろう』と思うような物件でも、近隣の相場と比べて価格が安ければ売れるものなんです。洋服の場合だと、好まないものならタダでもいらないということがあると思うのですが、家や土地に関しては周りの半額程度まで下げれば絶対に売れるといわれています。

 幅が狭い家や土地面積が15坪以下の小さな家は、『狭小住宅』と呼ばれることがあり、そういった住宅の場合、分譲価格が周りの建売住宅の3分の2から半額ぐらいになることも多いですね。土地の価格が安くなるからです。、特に駅に近い便利な場所であれば、どんな時代でも住みたいという人はいるものです。