負担感は新築の4倍?割安な築深マンション、割高な管理費・修繕積立金という落とし穴

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(資料:東日本不動産流通機構『首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2020年度)』

中古は毎年購入価格の1%以上の負担がついてくる

 しかも、築深物件は購入価格が安くすむ分、負担感が重くなる傾向が否めません。ハッキリいって、新築マンションを取得する人に比べて、中古マンション購入者の年収は少ないため、負担感が重くなってしまうのです。

 図表3は、成約価格に対する管理費と修繕積立金の比率を、建築年次別にまとめたものです。一見してわかるように、建築後の経過年数の長い築深物件では、毎年成約価格の1%以上のランニングコストがかかります。

 たとえば、1992年完成の築30年近い物件だと、年間では管理費が成約価格の0.81%、修繕積立金が0.72%で、合計1.53%のランニングコストがかかるのです。それに対して、2019年に完成したマンションの場合、成約価格が高くなっているだけに、この比率はかなり低くなります。管理費が成約価格の0.32%で、修繕積立金は0.12%の合計0.44%です。

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(資料:東日本不動産流通機構『首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2020年度)』

新築と中古では購入者の年収にも大きな違いが

 購入価格に対する比率でみれば、築浅物件の0.4%台に対して、築30年近い築深物件は1.5%台ですから、負担感でいえば4倍近い格差という見方もできます。

 住宅金融支援機構によると、2020年度にフラット35を利用して新築マンションを買った人の世帯年収の平均は789万円に対して、中古マンションを買った人は586万円で200万円以上の差があります。年収帯別では、中古マンションは400万円未満の人が35.1%と最も多く、次いで400万円以上600万円未満が31.4%で、年収600万円以上は33.5%と3人に1人程度にとどまっています。

 それに対して、新築マンションでは年収400万円未満は11.8%にとどまり、年収600万円以上が56.1%と半数を超えています。

 これだけの年収の違いがあると、ランニングコストの負担感は相当に違ってくるはずなので、十分に注意が必要です。

エリアや戸数規模でもランニングコストは異なる

 月額管理費、月額修繕積立金のランニングコストは、建築年次だけではなく、エリアや戸数規模によっても異なるので注意が必要です。

 図表4にあるように、首都圏では東京都区部が最も高く、埼玉県、千葉県は比較的安くすみます。東京都区部では月額管理費と月額修繕積立金のランニングコストの合計は2万4708円に対して、埼玉県は2万1164円で、月額にして3549円、年間では4万円以上の差になりますから、馬鹿にできない負担の差です。

 戸数規模別にみると、図表5にあるように、50戸未満の規模の小さいマンションと、200戸以上の規模の大きなマンションのランニングコストが高く、中規模クラスのマンションはやや安い傾向にあります。

 規模にかかわらず、日常の清掃業務などの負担は欠かせませんから、規模の小さなマンションでは1戸当たりの負担は大きくなります。それが規模が大きくなるにつれ、スケールメリットから1戸当たりの負担は減りますが、200戸以上の大規模マンションになると、共用施設が充実し、管理サービスも充実、超高層マンションなどでは修繕積立金も高く設定せざるを得ないなどの事情で高くなります。

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(資料:東日本不動産流通機構『首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2020年度)』)
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(資料:東日本不動産流通機構『首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2020年度)』)

ランニングコストの違いも目配りしておく必要が

 単に購入価格だけではなく、物件の条件によって月額管理費・修繕積立金のランニングコストに大きな違いがありますから、その点を頭に入れておかないと、購入後の家計負担に驚くことになりかねません。購入してから「こんなはずでは」ということになりかねません。マンションの購入を考えるときには、こうした違いも十分に考慮しておきたいところです。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

●山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。