話題のアップル・レガシーコンタクト機能、持ち主=故人の意外なメリットと注意点

“恥ずかしいものを含めて財産”である

 では、同機能を使う際、どんなことに注意すべきなのだろうか。

「まず、データを託す相手のデジタルリテラシーを考えてみることが大切です。デジタルに関して知識がまったくない人に託してしまうと、よくわからないまま放置されてしまうということも十分に考えられます。

 また、データを託す相手のメールアドレスはいつまでも有効なわけではありません。親族関係や友達関係が続いていても、そのメールアドレスを永遠に使い続けているとは限らないということを念頭に置き、登録後も数年に一度は確認しておくのがいいかもしれませんね」(古田氏)

 また、古田氏は同機能を使うにしても、スマホのパスワードは遺された人に伝えられるようにしておいたほうがいいと話す。

「ここ数年で、運免許証や健康保険証、財産などの重要なデータがスマホと連携する流れになっています。これらはほとんどの場合、持ち主の死後に放っておかれる類のデータではありませんが、手をつけようにも遺されたスマホのパスワードがわからず、遺族がどうすることもできなくて頭を悩ませるというケースは増えてしまうかもしれません。

 レガシーコンタクト機能を使ってもスマホのロックは解除できないので、スマホのパスワードを書いた紙を重要な書類と一緒に入れておき、いざというときのために遺族にわかるようにしておくといいでしょう。パスワード部分には修正テープを何度か走らせて、スクラッチカードのように隠しておいてください。これで盗み見られる心配がある程度抑えられますから」(古田氏)

 では、この機能が使われるようになることで、社会にどんな変化があると考えられるのだろう。

デジタル終活の認知度・実施度が高まるのは間違いないでしょう。特に、デジタル遺品の塩漬け問題はいくらか解消されるのではないでしょうか。ただ、この機能を利用するか利用しないかはユーザーの自由なので、実際に利用する人はあまり多くないかもしれません。それは今後の浸透具合によるでしょうね」(古田氏)

 しかし、デジタル終活を専門に扱う古田氏は、この機能の登場によって、人々の意識が変化することには強く期待を寄せている。

「デジタル終活がより身近なものになり、“自分の死後、デジタルの城には誰も踏み込むな”なんて考え方はすでに絵空事であることを知ってもらえればいいなと思います。実際、スマホやPCを持つ自分たちは恥ずかしいものも含めて財産を抱えているのだと気がつく、いいきっかけになるのではないでしょうか」(古田氏)

使うも使わないも個人の自由ではあるが、多くの人にとってデジタル終活と初めて向き合うきっかけになるかもしれない。

(取材・文=泥沼蛙/A4studio)