生保レディの過酷労働、生保会社「使い捨て」に変化か…人材の取捨選択転換へ転換

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「gettyimages」より

 生命保険会社の重要な営業チャネル「生保レディ」の過酷な労働実態に迫った8日付Yahoo!ニュース オリジナル特集記事『きついノルマ、経費は自己負担――大量採用・大量脱落「生保レディ」の労働実態』が話題を呼んでいる。同記事内では、

・生保レディの大半が個人事業主として働いており、顧客に配るグッズや名刺、駐車場代などの経費は自腹で負担

・一日150件の飛び込み営業のノルマがあり、成績が悪いと解雇される

・ノルマが達成できそうにないと、知人に名義を借りて新規の保険契約をつくり、保険料は営業職員が自腹で払う「自爆営業」をするように上司から要求される

といった現役職員・元職員の証言が掲載されている。かつて生保各社は毎年、大量に女性を生保レディとして採用し、その職員の知人や親戚を保険に加入させ、新規契約を獲得できなくなれば離職させるという「使い捨て」が業界の慣習として常態化し問題視されてきたが、現在でも上記のような実態は残っているのだろうか。

 かつては営業職員による対面販売が大半だった生命保険。近年ではインターネット直販や保険ショップ経由の販売が増加し、営業職員経由の販売が占める割合は54%まで低下している(生命保険文化センターの調査による)。それでも生保各社にとって営業職員は販売において重要な存在であり、生命保険協会によれば、加盟社の営業職員数は21年度時点で約24万8000人。19年度末時点で約3万3000人の営業職員を抱える明治安田生命保険は20年度にその数を1000人増やす計画を発表。業界最大手の日本生命保険は約5万4000人の営業職員を擁し、毎年1万人規模で採用を続けてきたことで知られる。各社は営業職員の引き留めにも躍起だ。日本生命は営業職員の賃金を23年度に平均7%、住友生命は平均5%、第一生命保険は23年4月から平均5%引き上げる方針を打ち出している。

 一方、「ターンオーバー」といわれる大量採用・大量離職を見直す動きも広まってる。22年6月2日付日本経済新聞記事によれば、年間採用数が6000~8000人台だった第一生命保険は21年度から採用の頻度を年12回から4回に変更し、3000~4000人程度にまで削減。日本生命は採用数の目標値を撤廃し、21年度の採用数は前年度より15%程度減少。同社に入社した職員のうち2年後に残っている人の割合は1999年度は約20%ほどだったが、21年度には58%に上昇したという。

「かつては昼休み時間に生保レディが職場に出入りして社員に声をかけ、グッズやパンフレットを配って営業活動する光景がみられたが、現在ではオフィスビルのセキュリティーが厳しくなったこともあり、ほとんどなくなった。会社の受付に備え付けられた内線電話前に陣取って、片っ端から社員に内線で営業電話をかけたり、若い男性社員をターゲットに合コンを設定して囲い込みを図る猛者もいたが、最近ではそれすらも難しくなっており、生保レディたちはいろいろな工夫をして見込み顧客への接触を図ろうとしている。

 生保各社は営業職員の評価基準に既存顧客の契約継続率や顧客訪問の頻度といった項目も加えて評価軸の多様化に努めているが、依然として新規獲得件数が最重要視される傾向は変わらない。業界特有の、入社3年目くらいから固定給が減る仕組みも残っている。加えて、最近では顧客者側も保険の購入を検討する際には自分で情報を入念に調べたりフィナンシャルプランナーに相談したりして知識が豊富になっており、営業職員はこれまでのようなGNP(義理・人情・プレゼント)が通用せず、自社・他社の商品に関する知識量とロジカルな説明スキルが求められるようになった。こうした変化も踏まえ生保各社は、営業職員の採用で厳密な選考を行い人材をより厳選する一方、優秀な職員には長く残ってもらうように取り組み始めた。要は人材の取捨選択の度合いを強めている」(金融業界関係者)