東京「耐震性なし」マンションの7割が未改修のまま…耐震診断は6割が未実施

 また、新たな指標として「長期優良住宅認定制度」もある。これは国土交通省が定めた認定制度で、新築については2009年、増築・改築する場合は16年より開始されたものだ。

「長期優良住宅の認定条件を満たすと、200年間は安心して住めると謳っています。これには耐震性も含まれていて、震度6強の大地震でも壊れないとされています。ですが、制度がまだ新しいこともあり、認定物件はまだ多くない。1戸建てやマンションなどを含めて、日本で新築住宅は年間80万戸ぐらい着工されていますが、そのうち長期優良住宅の認定を受けているのは1~2割ぐらいなのが現状です」(同)

 さまざまな基準があっても、そもそも認定を受けていない物件が多いとなると素人ではなかなか見極められない。それ以外に耐震性を推し量るには、どのようなポイントがあるだろうか。

「まず免震装置を組み込んでいるマンションであれば安全性が高いです。マンションに免震装置や免震設計が多く導入されはじめたのが20年ぐらい前からになるので、築年数も含めて安心できる物件といえるでしょう。また、免震装置の導入されたマンションに住む場合、地震保険の保険料が割引されるのもメリットです」(同)

外観から耐震性を判断も

 さらに、外観からでも、ある程度は耐震性が判断できるという。

「マンション全体の形が、ブロックのような四角四面の立方体のような構造になっているほうが揺れには強く、逆にデザイン性が高い物件だと危険といえます。例えば、雁行型という、各部屋の日当たりが良くなるように位置を少しずつずらして配置されたような建物形状だと、一般的に耐震性能が低いとみなされます。

 もう1つ、見た目でわかりやすいのはピロティの有無ですね。ピロティとは1階部分の壁を取り払って柱だけの構造に仕立て、そのスペースを生かして駐車場やエントランスにしている物件です。これも地震には弱いとされ、実際に阪神淡路大震災の時にはピロティ構造のマンションの倒壊が多かったという報告があります」(同)

 そして見逃しがちなのがマンションの「立地」だ。耐震性において良い立地とは、駅から近いなどの利便性ではなく、どんな地盤に建てられているかで判断する。

「そのマンションが建っている場所の地盤を調べたり、被害予想などをハザードマップで確認してみると、液状化の危険性などを予測することができます。液状化は湾岸部だけでもなくて内陸部でも発生します。東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の時には埼玉県の久喜市やさいたま市の分譲住宅地でも液状化が起こりましたが、そのあたりは河川や田んぼを埋め立てたという立地でした。東日本大震災では、千葉の新浦安が液状化しましたが、そこも埋め立て地です。江戸から昭和初期くらいまでに埋め立てされた地域は、比較的地盤が落ち着いているんですが、戦後の昭和30年代以降に埋め立てが始まったエリアはまだ地盤の強化が進んでないといわれ、耐震性という意味では脆弱とみられています」(同)

 どんなに耐震基準を満たした建物でも、その地盤そのものが弱かったり、液状化してしまっては意味をなさない。安全性の高いマンションを選ぶには、あらゆる指標をみて判断するしかなさそうだ。

「能登半島のある石川県は地震に対して安全なエリアとされていて、地震保険の保険料も1番安かったくらいなんです。兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では神戸で大変な被害が起きましたけど、地震が少ない関西エリアのなかでも、特に神戸は地震の影響が少ないということで有名でした。それでも被害が起きていることから学べる教訓は、日本には地震に対して100%安全なエリアなどない、ということ。それを頭に入れて、マンションや住居選びをするというのは大事なことだと思います」(同)

 利便性や資産的価値などに比べて、軽視されがちなマンションの耐震性能。改めて見直すだけでも、防災対策の第一歩になり得るだろう。

(文=清談社、協力=山下和之/住宅ジャーナリスト)