パズドラ以降、1千億円投下でヒット作なし→利益激減…ガンホー批判は的外れ?

 SC社が開設したサイトでは、ガンホーを大手ゲーム会社各社と比較している。

「前提として、ガンホーはPCゲーム、オンラインゲーム、スマホゲームの会社ですが、メインはスマホゲームです。比較対象としてあげられているゲーム会社をみてみると、まずバンダイナムコはガンダムなどのIPビジネスを収益の柱としており、ゲームは確かに大きな事業分野ですが、専業とは言い難い会社なので、比較対象としてはあまりよくないでしょう。老舗の大企業である任天堂とソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は自社でゲーム機を開発・販売するプラットフォーマーであり、スマホゲームはほとんどやっていません。コナミはコンソールとスマホの両方に力を入れており、リストアップされている会社のなかで比較的スマホに重きを置いているのは、バンダイナムコとスクウェア・エニックスくらいです。ガンホーと比較するのであれば、グリーやディー・エヌ・エー(DeNA)、KLabなどスマホをメインとする企業のほうが適切ではないでしょうか」

スクエニも「ドラクエ依存」「FF依存」といわれて久しい

 SC社は、ガンホーはパズドラ以降の約10年間、ヒット作が出ておらずパズドラ依存になっていると指摘しているが、それはどこのゲーム会社でも共通の傾向だと岩崎氏はいう。

「例えばスクエニにしても『ドラクエ(ドラゴンクエスト)依存』『FF(ファイナルファンタジー)依存』といわれて久しいですし、今『ストリートファイター』と『バイオハザード』の新作のヒットで盛り上がっているカプコンにしても、前者のブームを起こした第2作目がリリースされたのは1991年、後者は1996年です。これらの他にカプコンには『モンスターハンター』という強力なタイトルシリーズがありますが、この第1作目がリリースされたのは2004年であり、2018年の作品によって世界的なブランド確立に成功しています。同社はこれらを何度もリブート、リフレッシュしてシリーズ内の新作を世に送り出し続けて利益をあげていますが、これはどのゲーム会社でも共通していることです。このほか、バンダイナムコはガンダムやドラゴンボール、ワンピースなどIP事業に強いですが、収益に大きく貢献しているIPというのは非常に多いというわけではなく、一部に集中しています。よって、ゲーム業界のなかでガンホーだけが一部の強力なタイトルに依存してしまっているというわけではありません。

 また、ガンホーは軸足を売り切り型のコンソールゲームではなくオンラインゲームに置いているので、ドラクエやFFのようにシリーズ内で新作を何本もリリースしていくというのが難しく、新規IPをつくり続けてヒットを狙うという戦い方を取らざるを得ないというのも難しい部分です」(岩崎氏)

 パズドラ以降、約20の新規タイトルの開発に累計1000億円以上の資金を投入したもののヒット作が出ていないという指摘はどうか。

「たとえばDeNAにしても、09年リリースの『怪盗ロワイヤル』以降、同じくらい大ヒットしたタイトルがあるのかといわれれば、難しいところですが、それでもDeNAは苦しみながらもいろいろなことに挑戦しながら利益を上げて現在も続いているわけで、ガンホーも含めてどのスマホゲーム会社もそれは同じです。ゲームというのは当たり外れが大きい博打の世界ですし、そもそもパズドラのような大ヒット作というのは、そうそう出るものではありません」

(文=Business Journal編集部、協力=岩崎啓眞/ゲームプロデューサー、ゲームライター)