ワークマンと日高屋、なぜ値上げしても顧客が離れない?共通点と成功戦略

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ワークマン日高屋(「Wikipedia」より)

●この記事のポイント
・さまざまな要因が重なり、この数十年で類を見ないほどの物価高に見舞われているなか、飲食店や小売店でも値上げが続いている。値上げは客離れを招く要因となりやすいが、値上げしても好調を維持している企業もある。
・BUSINESS JOURNALではワークマンと日高屋に着目し、値上げしても客離れを最小限に防げた理由を聞き、客から支持される4つの共通点を分析した。

 原材料費や人件費、エネルギーコストの高騰などを背景に、多くの企業が製品やサービスの価格引き上げに踏み切っている。帝国データバンクの調査によると、2024年においても食品分野を中心に値上げの波は継続しており、消費者の生活に大きな影響を与えている。

 このような状況下で、企業は「値上げ」という避けて通れない経営判断を迫られている。しかし、安易な値上げは顧客離れを招き、売り上げの減少に直結するリスクをはらむ。一方で、巧みな戦略で値上げを実施し、むしろ顧客の支持を強め、売り上げを伸ばしている企業も存在する。明暗を分けるのは、一体何なのか。

 そこでBUSINESS JOURNALでは、値上げが続く中でも多くの顧客から支持され、好調な業績を維持している企業として、飲食業界の「日高屋」と、作業服・アウトドアウェア市場を席巻する「ワークマン」に注目し、両社への取材を通じて、値上げを成功に導く戦略と、顧客に選ばれ続けるための取り組みを深掘りし、多くの企業にとって示唆に富む「共通点」を探っていく。

目次

日高屋

ワークマン

【日高屋 – DXと顧客接点の再構築で値上げの壁を越える】

 首都圏を中心に「熱烈中華食堂日高屋」を展開するハイデイ日高は、2023年3月、2024年5月、同年12月に価格改定を実施した。度重なる値上げにもかかわらず、同社の既存店売上高や客数は堅調に推移している。その裏には、緻密な戦略と地道な企業努力があった。

値上げ直後の客数減を乗り越えた「次の一手」

 同社によると、2023年3月の値上げは、コロナ禍からの回復期と重なり、外食需要の増加に支えられ、大きな影響はなかったという。しかし、2024年5月の値上げ直後は、それまで増加傾向にあった客数が明確に減少に転じた。「直近の月(3~5月の値上げ直前)に比べて、一日あたり5000人ぐらいの客数が減った」という状況は、値上げが顧客に与える影響の大きさを物語っている。

 この客数減少の流れを反転させたのが、同年8月末に導入した「楽天ポイント」であったという。日本最大級の会員数を誇るポイントプログラムの導入は、新たな顧客層の呼び込みに成功。ハイデイ日高は、特に女性客の取り込みに効果があったと分析している。

 さらに、2024年12月の3回目の値上げ後も、一時的に1日あたり1万5000人の客数が減少したものの、その後は回復傾向にある。「現状は24年12月比でマイナス3000人ほど。つまり1万2000人ほどのお客様が戻ってきている」という。同社は、その要因として、世の中の物価高による消費者の節約志向の高まりを挙げる。今年に入り、コンビニのおにぎりなど、中食(なかしょく)商品も値上がりする中で、相対的に日高屋の価格競争力が高まり、他の外食や中食からの顧客流入が起きているのではないかとみている。