競合他社と手を組むことにデメリットはないのか。そう問うと、サントリーHDは明快に答える。
「GHG削減は競合領域ではなく、協調領域です。ここで協力することが、結果として持続可能な調達につながります」
特に農業分野における効果は大きい。農家はしばしば輪作(複数の作物を同じ畑で順に育てる農法)を行っており、単一企業による支援では十分な効果を得にくい。複数企業が協働すれば、農家にとっても一貫性のあるサポートとなり、実効性が高まる。
さらに、規模の効果や費用分担の点でも協働の利点は大きい。脱炭素の取り組みには多大な投資や人材リソースが必要であり、単独で進めれば非効率になりがちだ。協調によって「共通基盤」を整えることが、業界全体の加速につながる。
今回の取り組みの第一歩は、協調型の脱炭素プラットフォームを立ち上げることにある。サプライヤー支援や農業モデルの推進を通じて、データやノウハウの蓄積が進めば、将来的には「共同調達」や「共通システム」の利用といった、より深い協力へ発展する可能性もある。
欧州では、業界横断的な再生可能エネルギー調達や、共通プラットフォームによる排出量管理が広がりつつある。日本企業が国際的な競争で存在感を維持するためにも、こうした協調の基盤づくりは不可欠だ。
脱炭素は単なる「環境対策」ではなく、企業の競争力を左右する経営課題だ。世界的にカーボンプライシングや規制が強化され、投資家や消費者の目線も厳しさを増している。
特にスコープ3への対応は、企業単独では限界がある。今回のサントリーHDら4社の取り組みは、日本企業にとって次の3つの学びを示している。
(1)競合との協調が新しい競争力を生む
環境課題は「競争」ではなく「協調」が前提。業界横断的な枠組みづくりは、企業価値の持続性を高める。
(2)サプライヤー支援は長期的な投資
下請け企業や農家を単に「コスト削減の対象」と見るのではなく、共に成長するパートナーとして支援する姿勢が重要。
(3)プラットフォーム化が加速を生む
脱炭素の知見やデータを共有する基盤は、将来的な新事業や調達力強化にもつながる。
サントリーHDらの挑戦は始まったばかりだ。しかし、競合を超えて協力するという姿勢は、今後の産業界における新たな常識となるかもしれない。
企業がサステナビリティを真に実現するには、「一社の努力」ではなく「業界全体の協調」が不可欠だ。ビジネスパーソンにとっても、今回の事例は「自社の取り組みをどう広げ、誰と共に進めるか」を考えるきっかけになるだろう。
脱炭素時代の競争軸は、「どれだけ速く単独で走るか」ではなく、「どれだけ広く共に進むか」にある。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)