では、このベビーカーは具体的にどのような場面で力を発揮するのか。
・都市部のマンション:狭い玄関や収納スペースに置いても邪魔にならない
・共交通機関での移動:電車やバスに乗る際、足元に置けるサイズ感
・自動車での帰省・旅行:チャイルドシートと荷物に加え、トランクや座席足元に収まる利便性
特に「特急や新幹線での帰省シーン」は開発者自身の経験から強く意識されたという。
「従来型ではベビーカーの置き場に困り、予約が必要な場合もありました。床設置面積がA3サイズ以下なら足元に収まるので、移動時のストレスを大幅に減らせます」
ベビーカーを初めて購入する家庭にとって、最も大きなハードルは「操作の複雑さ」だ。
「お客様からよくいただく質問が『どうやって畳むんですか?』なんです。スマートフォンのように使い方が事前にわかるものではなく、子育てを機に初めて手に触れる製品だからこそ、操作方法に戸惑うものです」
その課題を解決するのが、今回のオートクローズ機能だ。片手でボタンを押すと自動で折りたたまれ、余計な操作は不要。
「また、セカンドベビーカーはすでに、ベビーカーを使用した経験のある方が、その体験を踏まえて追加購入を検討されるケースが多い製品です。そこで、ベルトや収納カゴが開閉時に引っかからないように設計するなど、細部に至るまで機能を磨き上げ、快適にご使用いただけるようにこだわりました」
従来、セカンドベビーカーの多くは3歳頃までの使用を想定していた。
しかし「もっと長く使いたい」という声は年々強まっている。今回のモデルでは剛性を高め、4歳まで使えるロングユース仕様を実現した。
「お子様の成長に寄り添い、長く安心して使えることは大きな付加価値です。買い替えコストの軽減にもつながるため、ユーザーにとってメリットは大きいと思います」
SNSで発表された瞬間から反響は予想を上回るものだった。
「今回、『できないこと、なくなれ』というメッセージを掲げてオートクローズ機能を中心に発信したところ、これまでの新製品発表時と比べても、桁違いのリアクションをいただきました」
9月上旬から各店舗に順次並んでいる。社内目標としては「セカンドベビーカー市場で過去最大の販売数」を目標に掲げており、発売後の販売も好調だという。
さらに、今後の展望についても前向きだ。
「今回のセカンドと同時に、ファーストモデルでもオートクローズ機構を導入しました。ユーザーの“もう一つの手”となる存在として、製品群を広げていきたいと考えています」
ベビーカーの小型化は単なる利便性の追求にとどまらない。都市部の住宅事情や共働き家庭の増加、公共交通の利用環境といった社会背景に直結している。
企業にとっても、“ユーザーの日常の小さな不満”を丁寧に拾い上げ、それを技術とデザインで解決することが次の市場を切り拓くことを示している。
今回の開発には、ユーザーの実体験に基づく視点、徹底した安全性検証、直感的な操作性の追求があった。これは、あらゆる消費財の開発に通じる学びである。
つまり、「ユーザーの困りごとを言語化し、そこから逆算して技術を組み合わせる」──その積み重ねこそが、生活を変えるヒット商品を生み出す鍵となるのだ。
「A3サイズに畳める」という一見シンプルな特徴の裏には、生活者の声に耳を傾け続けたメーカーの執念があった。ベビーカーは単なる移動手段ではなく、育児における親の自由度を左右する重要な存在だ。その一台が、都市部の狭い玄関や新幹線の足元にすっきり収まり、子育て世代の行動範囲を広げていく。
今回の「auto N second BQ」は、単なる新製品ではなく、“小さな不便を解消することで、大きな生活の変化を生む”というものづくりの本質を体現しているといえるだろう。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)