スズキ「ジムニーノマド」受注再開も争奪戦必至…なぜバカ売れするのに販売台数が少ない?

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ジムニーノマド(公式サイトより)

●この記事のポイント
・スズキ「ジムニーノマド」が2026年1月に受注再開する。4日で5万台完売の前回同様、再び争奪戦は必至だ。なぜ爆売れ5ドアを増産できないのか、その背景にあるインド生産と供給制約を解説。
・新車より100万円以上高い中古車が続出するジムニーノマド。転売と熱狂が生む異常な市場は、もはや実用車の域を超えた。スズキが直面する供給責任とブランド価値のジレンマに迫る。
・月産3,300台でも追いつかない世界的需要。ジムニーノマドは「待ってでも欲しい」商品が市場をどう歪めるかを映す鏡だ。抽選販売や転売対策が示す現代ヒット商品の正体を読み解く。

 2026年1月30日、日本の自動車市場は再び、異様な熱気に包まれる可能性が高い。スズキが人気モデル「ジムニーノマド(5ドア)」の受注を再開する予定だからだ。

 記憶に新しいのは、2025年1月の出来事である。日本導入が発表され、受注が始まるや否や、わずか4日間で約5万台もの注文が殺到。これはスズキが想定していた年間販売計画(約1万6,000台)の3倍以上に相当する数字だった。結果、同社は異例のスピードでオーダーストップを決断。「買いたくても買えない」ユーザーが市場に溢れかえる異常事態となった。

 あれから1年。供給体制の見直しを経て、ついに受注再開にこぎ着けた格好だが、市場では早くも「再び争奪戦になるのは確実」「前回以上に混乱するのでは」といった声が噴出している。

 なぜ、ここまでジムニーノマドは“手に入らないクルマ”になってしまったのか。そして、なぜスズキは需要が明らかなモデルを、思い切って増産できないのか。その背景には、日本の自動車産業が抱える構造的な制約が浮かび上がる。

●目次

新車より高い中古車、転売ヤーと熱狂的ファンのカオス

 ジムニーノマドの異常性を最も端的に示しているのが、中古車市場だ。

 新車価格はグレードにもよるが約275万円~。しかし中古車サイトを覗くと、走行距離がほとんどない車両が400万円超、500万円近い値で取引されているケースも珍しくない。オプションなどを差し引いても新車価格を100万円以上上回るプレミア価格が、すでに“相場”として定着してしまっている。

 背景にあるのが、「納車まで4年待ち」という半ば都市伝説のような噂だ。実際にはそこまでの期間が確定しているわけではないが、「とにかく待つ」というイメージが市場心理を冷やし、かえって中古相場を押し上げる悪循環が生まれている。

「完全に実用車の域を超えています。今のジムニーノマドは、ロレックスや高級ウイスキーと同じ“投機対象”として見られている側面がある」(自動車アナリスト・荻野博文氏)

 本来、ジムニーは悪路走破性に優れ、アウトドアや降雪地で真価を発揮する道具としてのクルマだった。だが現在は「所有すること自体に価値がある」という、極めて特異な立ち位置に押し上げられている。

なぜ増産できない?スズキの「インド生産・逆輸入」というジレンマ

「これだけ売れるのなら、なぜスズキはもっと作らないのか」というのは、多くの人が抱く素朴な疑問だろう。

 その答えは、ジムニーノマドの出自にある。ノマドは日本生産ではない。製造を担っているのは、スズキの連結子会社であるマルチ・スズキ(インド)だ。インド市場ではジムニー5ドアはグローバルモデルとして位置付けられており、日本向けはあくまで“逆輸入”という形になる。