迷えるオトナ女子のための自分らしさのトリセツ

「自分らしさって何?」がわからないあなたへ わからないままでいい理由

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はじめに

自己紹介が苦手、自分らしさがわからない、自分のことをどのように話したらいいか迷う、という人はいませんか?

転職活動や婚活、新しいコミュニティに参加する際など、「自分はこんな人間です」と自己紹介する場面はたくさんありますよね。
そんなときに「自分らしさ」を知っておかなければいけない、「自分らしさ」を見つけておかなきゃ、と焦る人もいるでしょう。

自分がどんな人間なのか、何がしたいか、何をしてきたか。
明確な答えがわかっていれば、自分に自信を持てるかもしれませんし、カッコいい自分になれそうな気がします。
だから、「自分らしさ」を知りたい、と思う人は多いかもしれません。

けれども、実際の自分はどうでしょう。

さほど得意なことがあるわけでもなく、特別好きといえることも見当たらない。仕事の業務で「これやってください」と言われたらできるけど、「やりたい」わけではない。生きる目的がはっきりあるわけではない。
なんとなく失敗しないように、まわりにも気を遣いながら、迷惑をかけないように、それなりの努力はしてきたつもり。これまで、ソツなく無難にがんばってきたのに、いざ「自分らしく生きろ」と言われても戸惑ってしまいますよね。

そんなあなたへ。世の中は、多様化、個性化の時代。
そろそろ「自分」と向き合って考えてみる時期がやってきたのかもしれません。

そもそも「自分」って?

そもそも「自分らしさ」って何でしょう。
あなたは、自分の中にある「自分らしさ」について、すぐに答えることができますか?

今、頭の中にふと浮かんだ「自分らしさ」について書き出してみてください。
「いいかげん」「テキトウな人間」「ビビり」「傷つきやすい」「何をやっても不器用」……どちらかというと、ネガティブな言葉を思い浮かべる人もいるでしょう。
他人からは「いい人」とよく言われるけど、それって「都合がいい人」という意味なのかなぁ、とモヤモヤしてしまって「自分らしさ」とは思えない、という人もいるかもしれません。中には「自分がない」「何も思いつかない」という人もいることでしょう。

「自分とは、どういう人間なんだろう」。このような問いを、誰もが一度は考えたことがあるはずです。
早熟な人なら、小学生のころから漠然と疑問を抱くことがありますし、多くの人は、中学生から大学を卒業するまでの青年期に考えることが多くなります。

E.エリクソンの発達理論では「自分とは、こういう人間なんだ」と知ることを「アイデンティティ(自我同一性)の確立」といいます。
アイデンティティ、つまり「自分とは、こういう人間だ」という確信を見つけることは、青年期の発達課題であり、この期間は様々な迷いや葛藤が生じるものなのです。
自分の価値観や考え方を見つめなおしてみたり、理想の人の真似をしてみたり、人にどう見られるか気にしたりと、悩みが尽きません。
エリクソンは、これを「アイデンティティクライシス(危機)」と呼んでいます。

これは、引っくり返して考えてみると、悩んで当然、自分が何者かわからなくってアタリマエ、誰しもが通る発達課題なのだ、ということなのです。
「自分がどうしたいかわからない」「何者なのか分からない」と考えると、「自分はおかしいのではないか」と落ち込んでしまうかもしれませんが、「そういう時期なんだ」「自分だけじゃない。みんなが悩む時期なんだ」ととらえると少しラクになりますね。

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プロフィール

高井祐子
高井祐子

神戸心理療法センター代表。公認心理師。臨床心理士。アンガーマネジメントファシリテーター。主に認知行動療法、マインドフルネスを用いて個人心理療法をおこなう。20年のカウンセラー歴を持ち、2025年4月までに、のべ15,602名と関わる。オンラインカウンセリングでは、日本全国のみならず海外からの相談に対応、グローバルに「こころの専門家」として活動している。著書に『認知行動療法で「なりたい自分」になる』(創元社)、『「自分の感情」の整えかた・切り替えかた』(大和出版)、『ラクに生きるための「心の地図」』(ナツメ社)などがある。

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