このアイデンティティの確立までの時期は、「モラトリアム期」といって、自分の社会活動について「自分がやりたいことは本当にこれでいいのだろうか」と悩み、模索することがあります。「モラトリアム」とは、アイデンティティを獲得するために、「社会的な義務や責任を猶予されている準備期間」のことを指します。
現代では、エリクソンの時代から比べると「モラトリアム期間」が延長されているといわれています。
どういうことかというと、青年期を過ぎて成人期に入った年齢であっても「自分探し」を続けている人が増えているということです。
例えば、社会人として働きながら資格を取るためにスクールへ通う、いったん会社を辞めて大学へ入り直す、転職活動をするなど「自分が何をしたいのか」を模索するのです。
最近では、ボランティア活動やワーキングホリデー制度を利用して、働きながら自分探しを模索するスタイルも一般的になってきました。
ひと昔前は、成人すれば社会人として責任のある経済活動をするものだ、という価値観が一般的でしたが、現代は違います。
会社に入社したから安泰、ということはなく、就職した後も、将来何を目指し、どのようにキャリアを積み重ねていくのかを自分なりに考えて行動することが大切になります。ただ言われた仕事をしていればよい、ということではなく、仕事を通じて将来の自分はどうなっていきたいかを考えることが求められるようになりました。
とはいえ、自分が何をしたいのか、目標を定めてからでないと活動してはいけない、なんてことは全くありません。自分らしさとは何なのか、わからないからこそ活動しながら見つけていくのです。社会経済活動を進めながら、自分なりの生き方やアイデンティティを模索していきましょう。
また、アイデンティティの確立は青年期だけの問題ではなく、中年期や老年期において何度も繰り返して再構築されるものといわれています。人生経験を重ねるにつれて、ものごとの考え方や価値観が変わることはありますものね。環境が変わることで生き方が変わることだってあります。
人間は、死ぬまで発達し続けるもの。自分とはどういう人間なのか、という問いは、一生かけて探していくものなのかもしれません。
ですから、今、あなたが自分らしさを見つけられなくても、大丈夫。探しながら歩んでいけばよいのです。
ところで最近は、自己紹介する際に手軽だという理由で、性格診断テストの結果を紹介する人もいるようですね。
心理テストや性格診断に関心を抱くのも、「自分はどのような人間なのだろう」という発達課題のテーマに合致しています。
友達同士で性格診断を楽しむという行動には、自分が一定のカテゴリーに分けられることで所属意識が満たされるから、また、カテゴリーごとに分類された性格傾向を把握することで他者や自分への理解がカンタンになるから、という理由がうかがえます。
性格診断テストの結果を見ると、分かりやすく整理されて提示されるので、あたかも自分の内面を全て言い当てられたような気持ちになり、「答え」を見つけたような安心感を覚えるかもしれません。「私は〇〇タイプだから、これがおススメらしい」「〇〇タイプと相性がいいらしい」と、診断テストの結果を鵜呑みにする人もいます。
けれども、本当にその診断結果はあなたの「自分らしさ」を表現したものなのでしょうか。
たまに「私は〇〇タイプなんだって。意外だよね」ということはありませんか?
性格診断の結果を、「意外だな」ととらえるということは、きっとあなたは、自分には診断結果とは異なる一面があると気づいているということなのです。
性格診断や心理テストでは、あなたが内向的な人間か、外交的な人間か、コミュニケーションをどのようにとる傾向にあるかなど、ある程度の「傾向」を知ることはできます。
けれども、あなたがどのような人間で、自分らしく生きるとはどういうことか、全てがわかるわけではありません。
あくまでも、自分自身の傾向を知るためのツールとして利用し、性格診断テストの結果がそのままイコール自分なのだ、と妄信しないようにしましょう。
「自分は何者なのか」「自分らしさってなんだろう」「どのように生きたらよいのか」という問いは、性格診断テストなど外部からの情報でわかるものではありません。
それは、自分の中から答えを見つけ出すものなのです。
オギャーと生まれたその日から、自分は自分として生きてきたはずなのに、まだまだ自分のことがわからないなんて、なんだか不思議で面白いですよね。わからないからこそ、知る過程を楽しみましょう。
これから自分らしさを見つけるためのヒントをご紹介していきますね。
自分のことを知る冒険の旅に出るつもりで、ワクワク楽しみながら、自分のことを解明していきましょう。